信州大(本部・松本市)の人文、経済、工学部などの研究者でつくる研究グループ(代表・村山研一人文学部教授)が水資源の利用、保全、循環に関する共同研究を始めることが22日、分かった。小水力発電などで課題とされる水利権制度の在り方、地下水の保全や利用をめぐるルール作りなどが主な研究テーマになる見込み。学際、総合的に、地下水や表流水などの水資源を管理・運用する提言につなげる研究は珍しいという。 河川法の水利権許可手続きは地域での合意形成のほか、事前準備から申請、許可までに労力と時間を要し、導入を考える市民らには負担となっている。研究グループは「水利権の壁が新規の水利用を阻害している」と指摘。小水力発電に詳しい池田敏彦・信大特任教授を中心に、下水内郡栄村など県内市町村でつくる「信州小水力会議」の協力を得て、水利権制度の課題を探る。小水力発電設備を実際に設置し、導入過程で浮かび上がる問題点などを検証する。 一方、地下水は原則、土地所有者が自由にくみ上げて利用でき、地下水を大量に使うミネラルウオーター業者などと地域の間で、摩擦を生むこともある。超党派の国会議員が理念法となる水循環基本法の制定を目指しているものの、研究グループは「地下水利用を包括的に管理するための制度が存在しない」と説明。地下水資源の涵養(かんよう)、活用などを検討している安曇野市を主な舞台に、地下水の利用、保全の在り方、ルール作りの研究を進める考えだ。 村山教授(地域社会学)によると、科学技術振興機構(JST)から3年間で計約5千万円の研究費助成を見込む。研究には社会学、法学、流体工学など信大の多様な専門分野の研究者が加わり、最終的な成果を報告書にまとめる。研究の一環で水の利用、保全をテーマにしたシンポジウムも開く予定。 同教授は「地域の公共財としての水資源の重要性が高まっている。水の利用、保全、循環に関する社会的なルール作りが必要な時代だ」とし、今回の研究の意義を強調している。(長野県、信濃毎日新聞社)
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