大町・北安曇を拠点にしている工芸活動をアピールしようと、大町市の大町温泉郷で29日、手作り品を集めた「手しごと・フリマ市」が初めて開かれる。地元雑貨店に勤める神戸市出身の立花千晶さん(35)=北安曇郡松川村=の呼び掛けに、ホテル・旅館13軒の後継者らでつくる大町温泉郷青年部が応じて協力する。観光客と一緒に市民も集える温泉地づくりに向けた一歩にもなりそうだ。 大町温泉郷のホテル勤務を経て、昨年4月から温泉郷内の雑貨店で働き始めた立花さん。自身も自然石に多肉植物「セダム」を植栽して北アルプスを表現する作品を作る。店でさまざまな工芸作品を扱ううち、「大北地方にもすてきな作家が大勢いる」と知った。工芸イベントが盛んな安曇野市や松本市のような発信の場を大町にもつくりたいと思い立ったという。 昨年秋ごろから手仕事市を構想。同じ思いの友人らと参加者を募り、草木染や刺し子、木工、似顔絵、フラワー装飾、羊毛刺しゅう、布小物など25人の多彩な作家の出展が決まった。ほかにもアロママッサージやネイルアートなどの手仕事が、会場をにぎやかにしてくれそうだ。 「心強いのは大町温泉郷青年部が応援してくれたこと」と立花さん。黒部ダム(富山県立山町)完成と同じ1963(昭和38)年から立山黒部アルペンルートの玄関口として発展してきた大町温泉郷では、団体客の減少などに対応するため、滞在型の新たな魅力作りが課題になっている。だが、「ホテルや旅館だけで(新しいイベントなどを)仕掛けることはなかなか難しかった」と、ホテル執行役員の遠藤美湖(よしこ)さん(39)は言う。 立花さんらの働き掛けで、5月に母親を対象にした写真教室を企画するなど新たな連携を模索する遠藤さんは、看板作りを担うなど市(いち)の実現に奔走。「これをきっかけに市民との結び付きも深め、活動の幅を広げたい」。立花さんも「いろいろな人とつながれば温泉郷にとっても大町市にとってもメリットが大きくなるはず」とこれからを楽しみにしている。 手しごと・フリマ市は午前10時~午後4時、温泉郷入り口近くの雑貨店「バザール小町」周辺で開く。(長野県、信濃毎日新聞社)
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