幕末から明治期に伊那谷を放浪した俳人井上井月(せいげつ)の顕彰会と伊那市立伊那図書館は、確認された分だけで1800句近くある井月の俳句のデータベース化を進めている。季語などのキーワードで検索できるようにし、研究に役立てる狙い。新句が見つかれば更新し、全集の改訂を待たずに読めるようにする。 地域の文化的な映像や画像などを保存、公開する同図書館の「デジタルアーカイブ」の一環。1930(昭和5)年に初版が出た「漂泊俳人井月全集」を基に、顕彰会副会長で井月研究家の竹入弘元さん(80)=伊那市荒井=が中心になって作業している。公開の方法や時期は未定。 各句を原文、現代仮名遣い、平仮名での読み方表記の3種類で入力する。平賀研也館長(53)は「本ではできない検索ができる」と話す。 竹入さんによると、井月は家を定めなかったため、原本が残っていない句が多い。全集にも原文が不明な句が載っており、誤植もある。「伸引もならぬ縁くむ師走かな」の例では、「多分『のっぴき』と読むのだろうが、辞書にない言葉で、行き詰まる」といった苦労もある。 井月の新句は今も見つかっている。竹入さんは「発見があるたびに更新できるのは良いことだ。できるだけ完璧なものを作って後々の研究に生かしたい」と話している。(長野県、信濃毎日新聞社)
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