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北ア・高山植物 シカ食べた跡? 研究者らに危機感

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 北アルプス爺ケ岳(2669メートル)に近い中部山岳国立公園内の標高2245メートル地点で、高山植物のタテヤマアザミのつぼみが大量に食べられた痕跡が見つかっていたことが分かった。専門家は、1カ所で集中的に食べられている状況などから、ニホンジカの可能性が高いと指摘。環境省松本自然環境事務所(松本市)によると、同国立公園内でシカが草花を食べたとみられる例は初めてという。北アではシカが分布を広げているとされ、研究者らが危機感を強めている。  周辺で3軒の山小屋を経営する柏原一正さん(57)=大町市平=が、タテヤマアザミが群生する通称「アザミ沢」で昨年8月下旬、登山道から見える範囲の3割ほどのつぼみが食べられた痕跡を見つけた。柏原さんは「こんなに集中的に食べられたのは見たことがない」と、同事務所に連絡した。  同事務所の自然保護官、有山義昭さんが現地を調査。シカのふんなどは見つからなかったが、八ケ岳や霧ケ峰でシカの植生への影響を調べている土田勝義・信大名誉教授(植物生態学)は有山さん撮影の写真を見て「100%ではないがシカの可能性が高い」と推測。「シカはアザミを好んで食べる。1カ所で大量に、特に花の部分を食べるのもシカの特徴だ」と指摘する。信大農学部の竹田謙一准教授(応用動物行動学)は「付近では、かなり標高の高い所でシカが既に目撃されており、シカの可能性は高い」とした上で、「断定するには無人カメラで食べる現場を確認するなどの必要がある」としている。  北アでは長くシカは生息しないとみられていたが、1998年の環境省のアンケート以降、目撃例が相次いでいる。2010年には県林業総合センターが同公園外の野麦峠(標高1672メートル)などでシカが樹皮を食べた痕跡を見つけた。昨年7月には、爺ケ岳西方、鳴沢岳(2641メートル)の高山帯稜線(りょうせん)上でシカが撮影されている。  アザミ沢の事例について、有山さんは「現時点で植生に影響が出るほどではない」とみる。ただ、竹田准教授は「南アや八ケ岳では、いきなり高山植物が大量に食べられる被害が見つかった。捕獲など今の段階で可能な限り北アからシカを排除する必要がある」と警告。柏原さんは「北アには立派なお花畑が各所にあるが、10~20年後には食べ尽くされてしまわないか」と危機感を強めている。(長野県、信濃毎日新聞社)


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