上田市教育委員会が2010年度に、市内の1小学校の複数の教員から男性校長の乱暴な言葉による指導で精神的な苦痛を受けた―との訴えを受け、調査した結果、校長の言動を「パワーハラスメント(パワハラ)」と認定し、2度にわたって口頭注意していたことが27日、分かった。市教委は、この小学校の運営がうまくいっていないことを理由に校長の異動を県教委に提案した結果、校長は12年4月に別の学校に異動したと説明している。 県教委は、この校長の異動に関する市教委の提案や経緯について「個別の人事案件については答えられない」(義務教育課)としている。 上田市の小山寿一教育長は「学校の要の立場にある校長がパワハラ行為をしたことは残念だ」とし、この校長は取材に「パワハラとの認識はなかった。(そう受け止めた教職員の)対応に驚いている」と話している。 市教委によると、この校長については、書類の記入ミスをした教員への指導の言葉が「厳し過ぎる」といった相談が寄せられたため、市教委は10年12月に校長に口頭で注意した。だが、その後も複数の教職員から「人格を否定するようなことを言われた」「言い分を聞いてもらえず、一方的に怒られた」といった訴えが相次ぎ、11年3月にも口頭注意したという。 市教委は「その後は新たな訴えがなかった」とし、県教委にはパワハラ事案として報告していない。 市教委によると、小中学校でパワハラとみられる事案があれば、校長が当事者の話を聞いて市教委に相談し、処分するかどうかや県教委に報告するかどうかを判断する。だが、今回は校長が当事者で、パワハラを受けたと主張する教員の1人が市教委の担当者に直接相談した。 この校長は「長い教員生活で、教職員への指導方法を市教委から注意されたのは初めて。その後は口調が乱暴になっていないかなどを気を付けている」と説明。小山教育長は「小中学校での指導経験が長い市教委職員を中心に、現場の教職員の状況をより積極的に把握するように努めている」と話している。 上田市教委によると、少なくとも08年度以降は市内小中学校の教職員によるパワハラ事案は他にない。県教委も、小中学校や高校の教員が上司からパワハラを受けたとする訴えはここ数年ほとんどないとしている。(長野県、信濃毎日新聞社)
↧