県野菜花き試験場(塩尻市)は、培地の温度が通常より高くなった場合でも生育障害が起きにくいエノキタケの新品種「長菌17号」を開発した。エノキタケの培地は、菌糸体が増える過程で熱が発生して温度が上昇し、丈がふぞろいになったり、生育が遅れたりする障害が出ることがある。同試験場は、新品種の普及で生産性の向上による経営改善が期待できるとしている。 同試験場は、キノコの需要が高まる今冬を目標に、県原種センター(長野市)を通じて種菌の供給態勢を整える。 エノキタケ農家は通常、空調設備で栽培室の温度を管理しているが、冷風の当たり具合などによって培地の温度が高くなってしまうことがある。このため、同試験場菌茸部(長野市松代町)が新品種の開発に取り組んでいた。 栽培試験では、栽培瓶の温度を最高で25度前後と、栽培に適した温度よりも約5度高く設定。従来品種では収穫までの日数が通常より2日半長くかかり、1瓶当たりの収量も20グラム減少した。これに対し、長菌17号は通常とほとんど変わらなかった。 また、栽培に適した20度前後の環境で長菌17号を用いると、収穫までの日数は従来品種より3日半短く、収量は20グラム増えたという。 県内の2011年のエノキタケ生産量は8万9522トンで、1985年の約1・8倍に増加。一方、市場価格(東京都中央卸売市場)は同期間で3分の1ほどに下落した。県産のシェアは62・5%と全国トップを維持しているが、新潟など他県産との競争は激化しており、同試験場は「オリジナル品種で県産エノキタケの競争力を高めたい」(菌茸部)としている。(長野県、信濃毎日新聞社)
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