うつ病などメンタルヘルス(心の健康)の問題で休職した人が職場復帰に向けてリハビリをする「リワーク」プログラムへの関心が県内でも高まっている。復職しても再び休職するケースが多いことから、プログラムでは、疑似的な職場で生活のリズムを整えたり人との接し方を身に付けたりする。ただ、県内での導入はまだ一部機関に限られる。一方、開設費用の補助制度を設け、実施機関を増やしている県もある。 今月上旬、長野市の「東口メンタルクリニック」。うつ病などで休職中の会社員や主婦ら10人が半日を過ごすショート・ケアに出席し、臨床心理士の指導の下、与えられたヒントを参考に課題を解く共同作業をした。 福祉施設に勤める市内の女性(49)は昨年11月から週数回通い、復職を目指す。うつ状態で1年以上休職。昨夏に復帰したが、3カ月で再び休職した。「以前は『早く復帰しなくちゃ』と焦っていた。今度はきちんと回復して復帰したい」と話す。 同クリニックがショート・ケアを始めたのは1年前。「診察で回復したとみなす水準と、職場が求める回復水準の間にギャップがあることが多い。溝を埋めるためにリハビリが必要」と鷲塚輝久院長(52)。スタッフが十分確保できず、半日の実施にとどまるが、「いずれは(終日の)デイ・ケアにし、内容も本格的にしたい」とする。 厚生労働省の外郭団体が運営する長野障害者職業センター(長野市)も2005年からリワークを支援。疑似職場「リワーク室」に休職者が通い、集中力を高めるために書類の集計作業などをしている。11年度は17人が復職した。ただ、県内に1カ所しかないため通える人は限られる。 2月下旬、県精神保健福祉協議会(長野市)が長野市で開いたリワークに関する講演会には、医師ら約80人が集まり、関心の高さを示した。千曲荘病院(上田市)の遠藤謙二院長(57)は「企業側には『もう少しリハビリをして職場に戻ってほしい』という要望がある。医療側が応えていけるかが課題」と話す。リワーク支援プログラムを取り入れても診療報酬に反映されず、職員確保などを考えると採算の問題も出てくると指摘する関係者もいる。 全国の病院などでつくるうつ病リワーク研究会(事務局・東京)によると、リワークプログラムを実施する同会所属の医療機関は3月4日現在で36都道府県の147カ所。同会発足時(08年)の33カ所と比べると増えたが、長野県内には所属する機関はない。 兵庫県は11年度から同プログラムを始める医療機関への補助を開始。同県の実施医療機関は1カ所から6カ所に増えた。長野県健康長寿課は「県内ではまだなじみが薄い。まずは医療関係者の理解を深めていきたい」としている。(長野県、信濃毎日新聞社)
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