映画館のない大町・北安曇、安曇野地方の有志でつくる「シネマ・ファン倶楽部」が、北安曇郡池田町で2008年から毎月続けてきた名画上映会の幕を、4月14日の60回目で閉じる。観客減による資金繰りの難しさが主な理由だが、惜しむ声は多い。有志らは年に何度かの無料上映会や新たな交流の場づくりの構想を温め、地道な文化活動の命脈をつなごうとしている。 同倶楽部の母体は、同町のNPO法人「安曇野田舎暮らし相談所」。移住者から安曇野市以北に映画館がないことを嘆く声を聞き、名画の上映会を開こうと会員約100人で倶楽部をつくった。 階段席のある町創造館ホールに大型スクリーンを持ち込み「赤ひげ」「慕情」「キューポラのある街」「砂の器」「戦場にかける橋」など、古今の邦画、洋画を会員の要望を基に上映。毎回、作品や俳優のこぼれ話を披露した同法人副理事長で映画俳優の江原達怡(たつよし)さん(76)=安曇野市=は「都会では古き良き映画を上映する館が増えている。そんな場にしたかった」と話す。名画文化の裾野を広げたいと度々無料上映会も開いた。 「映画が終わって拍手が湧くことも何度かあった。冥利(みょうり)に尽きますね」。理事長の遠藤一彦さん(66)、理事の佐谷(さたに)省三さん(76)は手応えを感じた。会員も約180人まで増えた。 ただ、年ごとに会場に足を運ぶ観客が減り、県元気づくり支援金が切れた本年度は、1回当たり5万~6万円かかる作品レンタル料と会場費の捻出が負担に。4月14日の「学校」(山田洋次監督)を最後に幕を引くことになった。 上映会終了の通知を受けた会員からは何とか続けてほしいとの声も寄せられているといい、遠藤さんらは同法人の運営費で年4回程度の無料上映会は続ける考え。「その先に、この地域ならではの交流の場づくりを考えていきたい」と再出発に意欲を見せた。(長野県、信濃毎日新聞社)
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