「あなたの損失を取り返す方法を知っている」。岡谷市の70代女性が昨年11月下旬からことし1月上旬にかけ、総額2500万円をだまし取られたのは、自宅にかかってきた電話がきっかけだった―。 県内で4月に入り、巨額の詐欺被害が相次いで発覚した。事前にパンフレットを送りつけて興味を引いたり、弁護士を装った電話でうその説明に引き込んだりする特殊詐欺だ。7日には伊那市の60代女性が数字選択式宝くじ「ロト6」の抽せん番号情報を提供すると持ち掛けられ、3千万円余りをだまし取られたことが判明。それ以前のことし1~3月に県警が認知した特殊詐欺の被害も、前年同期比22件増の30件、被害額は約1億円増の1億2905万円。4月に入っても減っていない。 岡谷署によると、岡谷市の70代女性は数年前、先物取引への投資を持ち掛けられ、数十万円の詐欺に遭っていた。昨年11月下旬に自宅に届いたのは、投資金を回収するという会社のパンフレット。その後に同社顧問弁護士を名乗る男から電話で「過去の損失を取り返す方法を知っている」と言われ、信じ込んだ。 女性は同社に連絡。「あなたの債務を買い取ってくれる資産家がいるが、金(きん)と一緒でないと買い取ってくれない」。そう言われて金購入代金690万円を都内に郵送。その後も求めに応じ320万円余りと約600万円を送った。 まだ金が届いていなかったことし1月上旬、再び弁護士を名乗る男から電話。「(過去の損失を埋める)現金を受け取るには『国民財産保証監督庁』に全財産を預け、審査を受けて」。架空の省庁名に気付かず、900万円余りを送った。その後も送金しようとしたが、銀行員が不審に思って通報。今月2日に家族の説得で同署に届け出た。 県警はこうした特殊詐欺を手口別に八つに分類=表。ことし1~3月は、架空の有価証券などの購入を持ち掛ける「金融商品等取引名目詐欺」が急増した。前年同期は被害ゼロだったパチンコ攻略法などを教えるという「ギャンブル必勝法情報名目詐欺」の被害もあった。県警によると、ギャンブル必勝法を教えるといった詐欺では、犯人は「あなただけに教える」などと誘う。家族などに相談させないためとみられ、犯行はどんどん手が込んでいるという。 県内では8日、中野市内の30代女性が、覚えのない架空の競馬情報サイトの利用料金を携帯電話の電子メールで請求されて15万円余りを、長野市内の80代女性が警察官をかたる不審な電話で「銀行口座が狙われている」と言われ、解約した定期預金約450万円を自宅を訪れた男に渡し、それぞれだまし取られたことが分かった。 県警地域安全推進室は「だまされたと気付かずに被害に遭い続ける人もいる。新しい手口が増え続けているのも、被害が減らない一つの要因」と話している。(長野県、信濃毎日新聞社)
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