母子家庭の母親らでつくる母子寡婦福祉会などが、父子家庭の父親にも入会を促そうと、団体名から「母子」「寡婦」を外す動きが県内で相次いでいる。県内18団体のうち7団体が3月までに団体名を変え、全県組織の「県母子寡婦福祉連合会」も今月、「県ひとり親家庭等福祉連合会」に改称した。入会しやすくして父子家庭の父親の支援を強化するとともに、活動の幅を広げ、組織としての発言力も増したいとの目的があるようだ。 母子寡婦福祉会は、戦争で夫を亡くした女性たちがつくった団体がルーツ。その後、離婚や死別で母子家庭となった人も加わり、福祉制度の充実を求めたり、親睦を深めたりしている。県内の18団体は市町村などの区域ごとに活動している。 県連合会によると、改称が始まったのは2010年ごろ。それ以前も男性の入会は可能だったが、「『母子』では男性が入りづらい」「『寡婦』という言葉は一般的でない」などの理由で、飯田市、諏訪市、北佐久郡軽井沢町などの7団体が名前を変えた。 伊那市母子寡婦福祉会は11年に、団体名を「市ひとり親家庭福祉会」に、会内部の「母子部」を「子育て部」に改称した。同福祉会は「男性のひとり親がまとまることで発言力が強まり、行政に福祉施策の充実を働き掛ける上でも意味がある。男性も加われることを多くの人に知ってもらいたい」としている。 県こども・家庭課によると、県内の父子家庭はここ10年ほどは3千世帯余りで推移している。国は母子家庭に限っていた児童扶養手当の支給対象を、10年度に父子家庭にも拡大。母子家庭の母親対象の国の就労支援も、昨年ようやく父子家庭の父親が対象になるなど、同連合会は「父子家庭への支援策は遅れている」と指摘している。 全国母子寡婦福祉団体協議会(東京)は、団体名から「母子」などの言葉を外す動きは全国ではまだ少ないとした上で、「父子家庭の父親の入会が増えているので、名称変更も広がる可能性がある」と話している。(長野県、信濃毎日新聞社)
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