県内で21~23日にあった果樹を中心とした凍霜害で、被害救済・補償制度の一つ「果樹共済」の未加入農家が多く、加入していても共済による穴埋めは被害額の一部にとどまるため、各農家に大きな影響が出かねない状況になっていることが、25日分かった。果樹はコメなどに比べて補助金制度が少ない品目。農家の高齢化が進む中、被害を受けて栽培をやめる人がいるのではないかとの懸念も強まる。 所有するリンゴ園約30アールの半分近くが被害を受けた安曇野市の農業男性(64)は「これまで大きな災害は無かった」といい果樹共済には加入していなかった。このため、例年は約150万円ある農業収入は「半分以下になる見通し」。それでも来年産に向けて作業は手を抜けず「農業はこういうものだと納得しているが、切ない」と話す。 果樹共済は、自然災害や病虫害による農業被害の一部を補償する制度。農家が農業共済組合に掛け金を支払い、一定規模を超える損害が発生した場合、その一部を共済金として組合から受け取る。 県農業共済組合連合会(長野市)によると、2013年産の果樹が災害で受けた損害を補償する果樹共済の県内の加入者は約6千戸、2600ヘクタール余。県内の栽培面積と比較すると加入率は22%ほどにとどまる。同連合会によると、例えば平年収穫額が約320万円のリンゴ農家が果樹共済に入り補償割合を最高7割にした場合、約220万円までが補償対象となる。 リンゴ園40アールの約3割が被害を受けた可能性がある古屋克視さん(68)=安曇野市三郷小倉=は、年間4万円程度の掛け金で果樹共済に加入している。補償額が決まるのは収穫間際というが「(単純計算で60万円の)被害全額は戻らないだろうし、お守りのようなもの」と本音も漏れる。 全国2位のリンゴをはじめ全国シェアの高い品目が多く栽培されている「果樹王国」の県内だが、担い手は高齢化が進んでいる。共済への加入、未加入にかかわらず、今回のような大きな被害をきっかけに「やめる農家も出てくる可能性がある」(古屋さん)との懸念は尽きない。 こうした中、各農協は対策を急ぐ。松本ハイランド農協(松本市)は26日、残った実の育て方や来年に向けた栽培方法を学ぶ講習会を開く。県農協中央会(長野市)の小松正俊専務理事は25日、取材に「できるだけ被害を最小限に抑える技術対策を徹底したい」と強調。「収入が得られないまま栽培を続けなければならない組合員への資金的な手当ても考えたい」とした。(長野県、信濃毎日新聞社)
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