長野、群馬両県の天然記念物ミヤマシロチョウの巣が、東御市と群馬県嬬恋村にまたがる湯の丸高原一帯の生息地で増える傾向にある。地元の保護団体「浅間山系ミヤマシロチョウの会」(柳沢孝会長)が調べたところ、調査木についた幼虫の巣の数が昨季の6倍以上だった。高原の自然環境が今冬安定していたほか、同会のパトロールにより違法採取が減ったことも理由とみられる。同会はこれだけの巣の多さは近年なかったとし、7月ごろの羽化シーズンの大量乱舞を期待している。 同会によると、ミヤマシロチョウは幼虫の餌になる低木メギの葉に卵を産み付け、幼虫が枝に巣を作る。巣は茶色く、直径3センチ前後の袋のような形で、一つに幼虫が30匹以上いる。会員で東御市教育委員会教育次長の清水敏道さん(56)が4月上旬、湯の丸高原の生息地を調査したところ、最も高い1・5メートルほどのメギに30個以上の巣があった。昨季は同じ木に5個ほどしか付いていなかったといい、周辺にある他のメギでも同様に増える傾向が確認できた。 清水さんは巣が増えている理由について「地元住民などが手入れしてメギの日当たりがよい。この冬は雨氷の影響もなく、巣が守られたようだ」と話す。2010年に長野、群馬両県の有志で発足した同会の会員が、違法採取を防ぐために随時パトロールをした効果もあったとみている。 ミヤマシロチョウは環境省と長野県の絶滅危惧種。県条例に基づく特別指定種で、研究者が捕獲する場合も県の許可が必要だ。かつては中部地方の山地に広く分布していたが、開発などで減少。県内の生息地は現在、湯の丸高原の他は八ケ岳、美ケ原高原、南アルプスに限られている。 清水さんは「近年は成虫が増えてきている。全盛期の昭和40年代並みに大量発生してくれればうれしい」と話している。(長野県、信濃毎日新聞社)
↧