JR東海が4月から無人化した飯田線飯島駅(上伊那郡飯島町)の待合室に、飯島町の風景写真などが展示されている。近くの自営業宮沢宏治(ひろじ)さん(69)が「駅を少しでもにぎやかにして多くの人に利用してもらい、路線の存続につながってほしい」と撮影した22枚だ。地元負担で駅員を配置した町も、切符売り場近くに観光パンフレットや広報誌などを並べ始めた。それぞれ小さな一歩だが、駅舎活用への機運が生まれつつある。 写真は、高遠原(たかとおばら)、伊那本郷など町内の飯田線駅の外観や町内のミズバショウなど。隣の上伊那郡中川村にも飯島駅利用者がいるため、天竜川の坂戸橋と周辺の桜など、中川村の写真も並べた。 自宅から見る列車は「時間帯によっては、ほとんど乗客がいない」と宮沢さん。自身も飯田線を利用することは少ない。JR東海による駅無人化を機に、このままでは将来廃線の可能性もある―と危機感を抱いた。「地域の足を守りたい」と駅などの写真を撮り、町を通してJR側から展示許可を受けた。 町が配置した駅員によると、写っている場所はどこかと聞く人もいる。27日、駅待合室にいた町内の女性(86)は「駅がにぎやかになってうれしいですね」と見入った。 写真は素人の宮沢さん。「まず自分にできることをしてみよう」とカメラを買った。今月中旬から20種類ほどのパンフレットなどを置いている町総務課の担当者も「身の丈に合った取り組みで親しまれる駅にしていきたい」と話す。 宮沢さんの夢は、待合室を地域の写真でいっぱいにすること。こうしたアイデアを取り入れた駅舎利用を図るため、町は近く、住民も交えた検討組織を設ける。(長野県、信濃毎日新聞社)
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