信州教育の再生に向け、県が14日、6月県会に関連予算案の提出を決めた「信州型コミュニティスクール」の対象地域に、上伊那郡辰野町、東筑摩郡山形村が挙がっていることが分かった。来年度までの2年間、東北中南信4市町村の小中学校17校をモデル校として実施する方針で、県教委は対象校を最終調整している。 信州型コミュニティスクールは、国が進めてきた、学校運営に保護者や地域住民が参画する制度(コミュニティ・スクール)と地域ぐるみで学校を支援する事業(学校支援地域本部事業)の機能を組み合わせ、学校を核に地域や保護者が手を携え、子どもたちを育む土壌を整備するのが狙いだ。さらに裾野をどう広げるか、学校と地域の調整役(コーディネーター)の人材養成や、学校教員の意識改革が課題となる。 県教委によると、モデル校には地域住民やPTAの代表らでつくる運営委員会を設け、これまで教員が担ってきた学校運営について一緒に話し合い、学校の評価にも携わる。地域住民からボランティアを募り、授業の補助や花壇の整備、登下校時の見守りなどを担ってもらい、教員の負担を減らす。 国は同様の制度・事業をこれまでも進めてきたが、学校側の負担感などから「国版」コミュニティ・スクールは県内で10小中学校にとどまる。また、学校支援地域本部事業は国による経費負担が2010年度で終わり、県教委のその後の取り組みは、事例紹介などのPRが主だった。 今回の「信州型」では、地域の人材にコーディネーターとして学校と地域の連絡や調整を担ってもらい、学校の負担感の軽減を図る。経費は国と県が計3分の2を市町村に補助する。伊藤学司県教育長は「一連の取り組みで県が補助金を出すのは初めて。開かれた学校を広げるという県の意思だ」と強調する。 県内では上田市塩田中学校のように、公民館職員が地域の教員OBらの協力を引き出し、学習支援ボランティアを続けることで生徒が落ち着きを取り戻した例もある。ただ、学校にも地域にも通じたこうした人材を、どう育てるかは今後の課題になる。 辰野町教委で学校と地域の連携を担当する元小学校長の栗林良裕さん(65)は「学校の扉を開くには、教職員、特に校長が意識を変える必要がある」と指摘する。「多くの学校や地域が取り組めるよう、県教委には成功例ばかりでなく、失敗を含めた過程を詳しく事例紹介してほしい」と注文した。(長野県、信濃毎日新聞社)
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