「(アイドルグループの)AKB48をプロデュースする立場なら何をする?」。就職活動中の大学生らが面接で企業から一風変わった質問をされたり、雑談で人柄を問われたりしている。企業側によると、その社を志望した理由や学生時代に何をしてきたかといった質問だけではなく、「予期せぬ問い」にどう対応するかで他者との「コミュニケーション能力」を推し量るという。県内の大学や長野労働局は企業がこうした能力を重視する傾向があるとみて学生に対応を求めている。 製造業への就職を目指す諏訪東京理科大(茅野市)システム工学部4年の男子学生(21)は、面接で「友人と遊ぶ際には自分から声をかけるか」「カラオケでは進んで歌うか」といった質問をされたことがある。「積極性や人との関わり方を探られているのかな」と感じ、これらに「はい」と答えたという。 都内の私立大に通う県内出身の女子大生(21)はある企業の面接で、自己PRをした以外は、面接官がほとんど自身の生い立ちや仕事について話していたことがあったという。志望動機などの答えを準備していたため戸惑ったが、「やるしかない」と、相づちを打ったり、「どちらにお住まいなんですか」などとこちらから積極的に質問するなどした。この面接は通過したといい「職場でうまくやっていけるか、人柄や対応を見ていたのかもしれない」と推測した。 電子回路やプログラム開発のマリモ電子工業(上田市)常務の関純さん(56)は、「以前より(学生に求める)コミュニケーション能力の優先度は高くなった」と話す。仕事を効率的に進めるには人間関係をうまく築く力が重要だと考えているからだ。面接では志望動機を聞くだけでなく、学生の答えに対して「なぜ、なぜ」と何度も質問し、深く掘り下げていく。 松本市に営業所があるサービス業の採用担当者(39)は「あえて予期せぬ質問をすることがある」と明かす。「仕事と無関係の質問をすると、学生は何とか答えようと知恵を絞る。それもコミュニケーション能力の一つ」 信州大(松本市)学生支援課長の金子功さん(51)は、2008年のリーマン・ショック後に企業がコミュニケーション能力を重視する傾向が強まったと指摘する。「知識や専門的な能力を発揮して結果を出すには、コミュニケーション能力を含めた人間力が必要」と金子さん。「景気の悪化で、企業がすぐに結果を出せそうな学生を求めるようになったのではないか」とみる。清泉女学院大(長野市)のキャリア支援センター担当者は「就職難の中、学生が面接で回答の形を整えようとするあまり、画一的な内容になってしまう面がある」とし、“変化球”にも対応できるよう「学生たちにはできるだけ自分らしい回答をするようにと指導している」と話す。 長野労働局(長野市)は、10年度に設置した新卒者ら対象の窓口「新卒応援ハローワーク」で、毎年夏に「コミュニケーション実践講座」を開いている。「コミュニケーション能力はさまざまな場面で必要。身に付ければ応用が利く」と、指導の際に重視している。(長野県、信濃毎日新聞社)
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