ウナギの価格が2010年ごろから続く稚魚不足で高止まりし、県内のうなぎ店や小売店は22日の「土用の丑(うし)の日」を前に対応に苦慮している。数年前から値上げ済みの店も多く、簡単には価格に転嫁できないため、かば焼きの大きさを小さくしたり、臨時休業を余儀なくされたり。国の調査では各家庭のうなぎ消費に充てる費用は減っており、客離れが進まないか、各店とも神経をとがらせている。 上田市の大型店は1週間ほど前、鮮魚コーナー一角を「鰻(うなぎ)」と書かれたちょうちんなどで飾り、かば焼きを並べた。だが、売れ行きは芳しくないという。 「高すぎる…」。3日夕、市内の主婦(25)は値札を見てつぶやいた。一切れ(約70グラム)のパックが税込みで830円。夫(30)と長男(1)の3人家族。「夫婦2人分の1660円を出すなら、おすしを食べますね」。男性店長(48)は「仕入れ値は上がっている。利幅を減らして並べているのだが…」と表情を曇らせた。 水産庁によると、昨冬から今春までの稚魚の漁期終了後、5月末までに全国の養殖業者が仕入れた稚魚は前年比約2割減の12・6トン。平均取引価格は1キロ248万円で、33万円上がった。28・9トンを仕入れた2009年の平均取引価格は38万円で約6倍にはね上がった。東京都中央卸売市場では、5月の成魚の価格は1キロ4573円。09年12月は同1848円だった。 ウナギを扱う長野市の加藤鯉店は、土用の丑の日に向けて近く新聞広告を出す。ただ、今後も仕入れ値が上がる可能性があるため、かば焼きの価格は「現在価格」と表示するという。「うなぎから一般の人が離れて行ってしまうのではないかと心配」と話す。 同市のうなぎ店では、昨年からうな重などのうなぎを少し小さくした。店主は「仕入れ値を販売価格に転嫁することさえ難しいほどの高騰。売るほど赤字」と嘆く。 総務省の昨年の家計調査によると、全国から抽出した7788世帯がうなぎのかば焼き購入に充てた費用は平均2082円で、前年(7676世帯)より764円下がった。うち長野市の95世帯は全国より368円高い2450円を使っていたが、前年(94世帯)より555円低い。 岡谷市のうなぎ料理店などでつくる「うなぎのまち岡谷の会」の会長、今野利明さん(44)の店では、昨年夏以降「うな重並」の価格を以前より600円高い2900円としたまま、価格を据え置いている。「(出荷量が減り)うなぎの取り合いになれば、価格がもっと高くなるかもしれない。それが一番恐ろしい」 松本市のうなぎ店は、入荷量を十分確保できずにいる。県外の複数の業者から仕入れているが、3日は午前11時半の開店から30分ほどで売り切れて店じまい。開店と同時に売り切れる日や、仕入れられずに店を開けられない日もあるという。(長野県、信濃毎日新聞社)
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