県内外の鉄道ファンの有志5人が、旧松本電鉄(現アルピコ交通)上高地線でかつて活躍した電気機関車の外観の修復作業に取り組んでいる。機関車は戦前に米国で製造され、現在は廃車となり、松本市の同線新村駅の車庫で保存されているが、傷みが激しいことから、アルピコ交通社員で昨年12月に37歳で亡くなった林公介さんが修復を計画。林さんの仲間たちが、遺志を継ごうと同社の協力を得て実施している。 機関車は「ED301」号。同社によると、もともと信濃鉄道(現JR大糸線)が1926(大正15)年に導入した。その後、旧国鉄や西武鉄道を走った。上高地線に60(昭和35)年に移り、農産物を運ぶ貨物列車などで活用。2005年に廃車となった。 有志によると、上高地線の運転士や運行を管理する指令所の仕事を担当し、鉄道ファンでもあった林さんが生前、「歴史がある車両なのできれいにしたい」と、仲間に修復を提案。昨年11月に集まって具体的な計画を立てたが、林さんはその直後、心筋梗塞で亡くなった。 作業はことし5月に始め、月2回ほど行っている。車体に浮いたさびを研磨機で削り取り、さび防止剤を塗布。さらにパテを塗り、やすりで平らにしてから茶色に仕上げている。穴が開いた所もあるため、FRP(繊維強化プラスチック)で補修している。 同社鉄道事業部は「大変感謝している。完成後は、鉄道ファンや地域の方向けの撮影会を開きたい」としている。 作業に取り組んでいる岩崎直彦さん(53)=東京都=は「手間はかかるが、林さんもやりたかったはず。何とか完成させて弔いとしたい」。9月のお披露目を目指して、作業を続ける予定だ。(長野県、信濃毎日新聞社)
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