太平洋戦争(1941~45年)の戦没者らの遺族でつくる県遺族会(事務局・長野市)が、戦争体験の伝承などを目的に、戦没者の孫やひ孫らでつくる「孫、ひ孫の会」の結成を検討し始めた。同会の会員数は高齢化などで減る一方。会長の桜井真さん(73)=南佐久郡佐久穂町=は「戦争の悲惨さや平和の大切さを伝えていく活動を(私たち)遺児の世代で終わりにできない」とし、今後、各市町村ごとの遺族会で話し合いを進めてもらい、来年3月までをめどに方向性を決める方針だ。 県遺族会の会員は戦後間もない時期に約5万人を数えたが、亡くなったり、高齢で活動に参加できなくなったりする人が増え、現在は1万7千人余にまで減少している。現在の活動の中心は遺児で、終戦記念日の8月15日に都内で毎年開かれる全国戦没者追悼式には県内から100人以上が出席しているが、孫、ひ孫はほとんどいないという。 孫、ひ孫の会の結成は、全国組織の日本遺族会(東京)も昨年来、全国に呼び掛けている。長野県遺族会では7月30日、桜井さんが長野市で開いた同会理事会で提案した。 同会内には結成に前向きな意見がある一方、理事会では他の理事から「上から押しつけるようにして結成しない方がいい」「核家族化が進んでいて孫が家にいない」といった声も出た。「遺児の世代は、父が亡くなり、苦労した母親の姿も見ているが、孫やひ孫は祖父や曽祖父に会ったことがない」と、結成は容易ではないとの見方も出ている。 一方、全国では熊本県遺族連合会が既に孫、ひ孫の会を結成済み。40代、50代を中心に73歳から7歳までの約480人が会員となり、慰霊祭出席や海外の戦地の訪問などの活動をしている。同連合会事務局の担当者は「祖父や曽祖父が戦争に行ったことをまず知ってほしいと、(新たな会員に)忠魂碑などに刻まれた名前を見てもらうといった活動もしている」と話す。 長野県遺族会事務局によると、ことしの全国戦没者追悼式には県内から50~80代の115人が参加予定だが、孫とひ孫はいない。孫、ひ孫の会ができれば、まずこうした追悼式など行事への参加を促していきたいとしている。(長野県、信濃毎日新聞社)
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