国の制度改正で、県内旅行会社が企画していた「高速ツアーバス」は1日から、より安全基準の厳しい高速乗り合いバスに移行した。新たに義務付けられた停留所の確保が各社の課題で、運賃値上げや減便など、利用者にも影響が出ている。移行後初の週末、県内利用者からは値上がりを嘆く声が出る一方、安全性向上への期待も聞かれた。 県内でツアーバスを企画してきた旅行会社は2社。トラビスジャパン(上伊那郡箕輪町)は、全17路線を乗り合いバスにするため停留所約50カ所を県内外に確保したが、土地借用などの経費がかさみ、運賃は200~700円ほど値上げした。アリーナ(長野市)が運行していたツアーバスはウィラーエクスプレス北信越(本社・東京)が継承。8月からは長野―新宿間1日最大往復14本を同12本に減便。停留所は9カ所から6カ所に減り松本駅前(松本市)などは止まらなくなった。 「600円の差は大きい」。3日夕、中央道諏訪インター近くの諏訪市のバス停で、茅野市の女性会社員(45)はこう話した。諏訪―新宿(東京)間のツアーバスは予約方法によっては片道1人約1600円で乗れたが、乗り合いバスに移行し同2200円に。この日は、帰省していて都内に戻る専門学校生の長男(20)と、一緒に遊びに行く高校2年の次男(17)を車でバス停に送り届けたが、「2人で往復すると1万円近い」とため息をついた。 一方、下伊那郡阿智村の会社員水野誠さん(39)は3日、飯田市の伊賀良停留所から、路線バス会社が運行する既存の新宿行きバスに乗り、「バスはやっぱり安全が第一」。都内から4日に帰宅した長野市豊野町の主婦霜村芳美さん(60)も「どのバスが安全か、消費者である乗客には分かりにくい。国の規制強化でバスの安全が確保されるならそれが一番いい」と話した。 制度移行で県内を起終点とする高速バス路線網が固まるには時間がかかりそうだ。トラビスジャパンの飯田―新宿、駒ケ根―新宿の2路線は、中央道にある停留所10カ所の確保のめどが立たず、運行できてない。同社は、運行を見越して8月分の予約を約100件受け付けたが、断った。 従来、高速乗り合いバスを運行してきた県内外6社が使っている停留所の共同利用を申し入れているが、結論は出ていない。5日に各社担当者が集まり、トラビスジャパンの申し入れへの対応を話し合う予定だが、ダイヤ調整の必要性や、金額の違いをどう考えるかについて足並みがそろうのかは不透明という。(長野県、信濃毎日新聞社)
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