茅野市の蓼科高原にゆかりの深い映画監督・小津安二郎(1903~63年)にちなんだ「第15回小津安二郎記念・蓼科高原映画祭」は28日、市内で7本の映画を上映して2日間の日程を終えた。茅野市民館では原田真人監督の「わが母の記」を上映後、出演した女優樹木希林さんと原田監督による舞台トークがあり、約760人が聞き入った。 「わが母の記」は作家井上靖の自伝的小説が原作。幼いころ母と離れて育った小説家が、老いて記憶が薄れていく母と徐々に心を通わせる姿を描いた。 舞台トークで樹木さんは、年老いた母を演じるため入れ歯をはずして撮影に臨んだ裏話を紹介。文学座の先輩、故・杉村春子の付き人として小津監督の遺作「秋刀魚(さんま)の味」(62年)の撮影に立ち会った逸話に触れ「しーんとして、せきの音一つしない。あんなに怖い現場はなかった」と振り返った。 原田監督は「わが母の記」でも小津作品を参考にしたと説明。奥行きを感じさせる家屋の映像などに、同じ手法を取り入れたと解説した。 この日は、JR茅野駅近くの新星劇場でも小津作品を含む4本を上映した。(長野県、信濃毎日新聞社)
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