長野市権堂町の老舗喫茶店「珈琲(コーヒー)の奈良堂」が31日、66年の歴史に幕を下ろした。1947(昭和22)年、画材店の一角で開店し、多くの文学青年や画学生が集まった。建物を壊す計画が出ており、店の賃貸契約を更新せずに閉店することになった。最終日は朝から多くの客が訪れた。 奈良堂は、2011年春に83歳で亡くなった前経営者の河原八重子さんが、ギャラリー兼アトリエだった2階の一角で始めた。店内には河原さんが好きだったシャンソンなどが流れ、同市出身の芸術家、故池田満寿夫さん(1934~97年)も長野北高校(現長野高校)時代に通った。 店主の長峰孝春さん(63)=長野市松代町松代=は、店員だったころの名残で、今も常連客から「チーフ」と呼ばれている。長峰さんは「お客さん一人一人が主人公の店。たくさんの人に助けてもらった」と振り返った。 15年ほど前から会社帰りにほぼ毎日、定年退職後も週に1回ほど通ったという同市屋島の農業村松毅さん(61)は「カウンターでコーヒーを飲みながら励まされたり〓(叱の異体字)られたりして元気をもらっていた」と話していた。 客たちはいつものコーヒーを飲み終えると、「ごくろうさまでした」などと声を掛けて店を後にした。長峰さんは4日まで、備品整理のため店におり、カップなど思い出の品を希望者に譲るという。(長野県、信濃毎日新聞社)
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