国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「エコパーク」として文部科学省が推薦することが決まった南アルプス地域。地域拡大が申請される志賀高原。関係する県内自治体は4日、登録実現に向け「大きなステップ」ととらえ、生態系保全と観光振興や産業育成といった活用の両立に向け、さらに魅力を高めたいと意欲を見せた。 伊那市の白鳥孝市長は、来年の南アルプス国立公園指定50周年、貴重な地質や地層が見られるジオパーク普及に向けた全国大会の地元開催計画にも触れ「南アへの注目度、皆さんが寄せる思いがまた変わってくる」と期待した。 伊那市と飯田市、下伊那郡大鹿村、諏訪郡富士見町を含む長野、山梨、静岡の3県計10市町村は8月、登録実現に向けて基本合意を締結。登録後の管理運営に10市町村が共同で当たることを明確にして意欲をアピールしたばかり。 基本合意では、ニホンジカによる高山植物の食害対策を含む自然環境保全や登山環境整備、南ア山麓への定住促進や地域間交流、特産品開発、自然環境を生かした産業の育成などを主要施策に挙げた。管理運営体制として、住民参加のエコパーク地域協議会設置も想定する。 富士見町の小林一彦町長は「自然遺産登録へ向けて積極的に活動したい」と話した。釜無山の固有種「釜無ホテイアツモリソウ」の保護活動、入笠山中腹の入笠湿原の保全に触れ「多くの人が訪れて学び楽しめるよう、学術的にも観光的にも魅力を磨いていきたい」とした。 飯田市の牧野光朗市長は「将来的に世界自然遺産への登録を目指す上でも重要なステップと言える」とコメントを出した。大鹿村の柳島貞康村長は「一歩前に進んだので非常にうれしい。とても明るい希望になった」と喜んだ。 志賀高原では、エコパークを地域振興などに活用していくため、県内2町村と群馬県側の3町村で6月に「志賀高原ユネスコエコパーク協議会」を発足させた。会長を務める下高井郡山ノ内町の竹節義孝町長は「観光振興や農産物のブランド化、環境教育により積極的に取り組んでいく」と喜ぶ。町はエコパークの地域拡大認定を見込む来夏までに、具体的な活動の計画づくりなど準備を進める。来年夏に関係自治体に呼び掛け「全国エコパークサミット」を志賀高原で開く構想も立てている。 上高井郡高山村の久保田勝士村長は「村には温泉地が多く、良質なワイン用ブドウの産地でもあり、健康長寿の村としてブランドづくりの弾みになる」と話した。(長野県、信濃毎日新聞社)
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