2020年夏季五輪の東京開催が決まり、県内企業からは9日、「景気浮揚に向けた起爆剤になる」と歓迎の声が上がった。建設業では五輪関連の施設整備に伴う受注などが追い風になるとの期待が高く、観光業も海外からの観光客の取り込みを狙う。ただ、建設工事を担う作業員が東京に集中し、人材不足や労務費高騰につながらないか―との心配も出ている。 五輪スタジアムなど関連施設の建設には約3800億円が投じられる計画で、建築資材販売・施工を手掛ける角藤(長野市)の大久保公雄社長は「(受注の)チャンスは増える」。同社の売上高の約半分は首都圏での受注で「道路や宿泊施設の建設などで専門工事が必要な場合も出てくる。このチャンスをどう生かせるか検討したい」と話す。 主に県内工事を受注するヤマウラ(駒ケ根市)の北村光正管理本部副本部長も「東京五輪の開催で国内の景気全体が回復してくれば、いずれ民間投資も活発化する」と波及効果を見込む。 海外からの観光客が大幅に増えることも予想される。長野電鉄(長野市)は、ホテル事業などの需要拡大を見通し、「外国人向けの案内体制を整備していく必要がある」(企画部)。軽井沢プリンスホテル(北佐久郡軽井沢町)の担当者も、効果的に県内へ誘客できるよう「地域一体で取り組む必要がある」とする。 県産品のアピールにも格好の機会だ。サンクゼール(上水内郡飯綱町)の久世良三社長は、首都圏の直営店でのワインやジャムなどの販売を通じて「ブランド力を高める起爆剤にしたい」。土産物製造・販売などのタカチホ(長野市)も「東京五輪の公認グッズを受注、生産したい」(総務部)とする。 一方、アルピコ交通(松本市)は1998年の長野冬季五輪で選手輸送を担った経験から東京五輪でも業務受注を期待。ミマキエンジニアリング(東御市)も広告看板や応援グッズなど向けに業務用プリンターの需要増を見込む。 この日の市場は東京開催を好感し、県内上場企業の大部分の株価も上昇。建設関連で北野建設(長野市)が4・3%、ヤマウラが3・5%それぞれ上がったほか、タカチホも直近の終値と比べて3・8%上昇した。 ただ、首都圏で建設需要が高まり、県内の工事の作業員が不足するとの見方も出ている。長年の建設不況や東日本大震災の復興工事の影響で建設業界では人手不足が続いており、今後、作業員を雇う労務費が増えれば収益の圧迫材料となる。角藤の大久保社長は「作業員が東京に流れ、県内工事ではマイナスの影響が出る」と指摘。北野建設は「五輪開催による市場拡大よりも、労務費が上がるリスクが心配」(社長室)としている。(長野県、信濃毎日新聞社)
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