リニア中央新幹線の環境影響評価(アセスメント)準備書が18日午前に公表となり、50キロ余りに及ぶ県内リニア路線の全容が明らかになった。JR東海の山田佳臣社長は「まずはほっとしている」と述べ、早期着工に意欲を見せた。JR側から分厚い準備書を受け取った沿線自治体のトップらは、大きな節目を迎えたことをあらためて実感し、JR側に地元への十分な説明などを求める声が出た。 飯田市役所には18日午前9時、JR東海中央新幹線推進本部中央新幹線建設部の古谷佳久担当課長ら2人が訪れた。段ボール箱から分厚い環境影響評価準備書や関連資料を取り出すと、多くの報道陣に囲まれながら牧野光朗市長に手渡した。 準備書を受け取った牧野市長は「中身を見させていただき、意見がありましたら、(リニア建設促進の)飯伊地区期成同盟会など関係機関の皆さんと相談しながら申し上げたい」と述べた。 早速、路線や駅位置などが示された全体図をめくった牧野市長は報道陣に対し、「全て見るにはかなり時間がかかる。要約された物を見た後、期成同盟会の正副会長の皆さん方と共にコメントを出させていただく」と語った。 JR東海の山田社長は名古屋市の本社で午前10時半から記者会見し、冒頭、「18年にわたる地質調査と2年間の環境影響調査をようやく集約できた。まずはほっとしている」と感想を述べた。 約70人の報道陣からは、着工、開通のめどなどについて質問が相次ぎ、山田社長は「できるだけ早く着工し、一日でも早く仕上がるように努力していくが、大深度地下や南アルプスのトンネルは掘ってみなければ分からないところもある」などと答えた。 長野市の県庁6階の環境部には午前9時、飯田市にあるJR東海の「環境保全事務所(長野)」の奥田純三所長が訪れ、「どうぞお受け取り下さい」と準備書を提出した。受け取った塩谷幸隆・環境政策課長は神妙な表情で「今後、十分に環境配慮がなされているかを審査していく。地元にも丁寧な説明をしていただきたい」と求めた。 木曽郡南木曽町役場にも午前8時50分ごろ、JR東海の社員が準備書が入った段ボール2箱を抱え、町総務課の窓口を訪れた。すぐに中身を確認した原秀樹総務課長は、厚さ15センチほどの準備書を手に「分厚いな」。ルートが町のどの辺りを通るのかもその場で調べ、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている妻籠宿一帯を避けていることを確認し、「とりあえずよかった」と安心していた。 町長室で宮川正光町長も目を通し、「住んでくれる人が増え、観光が寂れないよう、努力をしないといけない」と話した。(長野県、信濃毎日新聞社)
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