Quantcast
Channel: 信濃毎日新聞
Viewing all articles
Browse latest Browse all 7401

木のとげで「館」防御? 松本・井川城跡にサイカチの花粉

$
0
0

 室町時代の信濃守護で、江戸時代に松本城主を務めた小笠原氏が松本市で最初に築いた館があったとされる市特別史跡の井川城(いがわじょう)跡(松本市井川城1)の発掘調査で、堆積物から落葉高木サイカチの花粉が2日までに見つかったことが分かった。専門家は幹や枝にとげのあるサイカチを防御目的で館周囲に植えていた可能性が高いと指摘。信州大副学長の笹本正治教授(日本中世・近世史)は、中世の城や館は文献などが少なく実態が未解明な部分が多いとし「土壌分析という方法によって中世の城の実態に近づけたのは、全国的に見ても先駆けとなる成果」と話している。  市教委は6月から、井川城跡の一部で発掘調査を実施。文献と伝承から14~15世紀に井川城があったとされる範囲で、盛り土を固めたとみられる高さ1メートル余の土の層が確認され、大規模な館などの施設を造成したとみられることが既に分かっている。  今回、市教委が館があったとみられる周囲の地層の堆積土を採取。環境史が専門の辻誠一郎・東京大教授(61)が分析し、花粉を検出した。「ほかの内容物に比べて圧倒的な量」(辻教授)といい、自生ではなく、館を取り巻くように意図的に植えられていた可能性があるとみる。  辻教授によると、城跡からサイカチの花粉が確認された例は、江戸城外堀跡と、室町時代の15世紀後半に築城されたとされる埼玉県行田市の忍(おし)城跡があり、今回が3例目。中でも井川城跡の検出量が最も多く、「防御目的でサイカチが植えられていたと考えられる。中世の館があったことをさらに裏付ける証拠の一つになったのではないか」としている。  辻教授は11月中旬にも土壌を採取し、分析を継続中。「この地にわざわざ館を造ったのはどうしてか、周辺環境から明らかになる可能性がある」としている。  井川城は、室町時代の1340年ごろ、小笠原貞宗が館を築いたとされる。松本市教委の担当者は「約100年間、信濃の政治の中心だった」と推測し、「地域にとってわくわくする発見」と、今後の分析結果に期待している。(長野県、信濃毎日新聞社)


Viewing all articles
Browse latest Browse all 7401

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>