「なぜ、そこまで急ぐのか」「民主主義を無視している」。特定秘密保護法案が参院国家安全保障特別委員会で可決した5日、国会審議を見つめてきた県内各地の市民は街頭などに出て、憤りと怒りの声を張り上げた。6日にも参院本会議で法案が成立する可能性が強まり、国民の「知る権利」を脅かしかねない状況が近づくことに、市民の危機感が強まった。 5日夜、法案に反対する市民であふれる国会周辺に、県内関係者の姿もあった。 2日から都内に出張していた千曲市の男性会社員(50)は委員会採決を知り、仕事が終わってすぐ、午後7時ごろに駆け付けた。「秘密保護法ぜったい廃案」と書かれたプラカードを参議院議員会館前で掲げ、「廃案」と声を張り上げた。法案の抗議活動に参加するのはこの日が初めてだ。 「戦争は秘密から始まると思う。自民党の石破茂幹事長がデモをテロ行為に例えた。そんな認識の人が権力の側にいるのが怖い」と話した。 長野市出身で都内在住のフリーカメラマンの女性(38)は国会正門前の抗議活動に参加した。衆院通過以降、特に危機感を感じており、参加は3回目だ。「自衛隊向けの部品を製造している友人がいる。雑談で聞いたことをフェイスブックに書き込んだ後、特定秘密に当たるとして私が取り調べられるかもしれない」と恐れ、「実家は長野で商売をしているので、もしそんなことで私が捕まれば親にも迷惑が掛かる」と訴えた。 県民の憤りも強まった。 「まさかとは思うが、現政権を見ていると日米同盟を強化することで戦争に巻き込まれるのではないかと感じる」 午後8時すぎ、長野市権堂町のスーパーで買い物をしていた長野市桜枝町の福祉施設職員、薄井美里さん(65)は法案が参院特別委で可決したことを知り、こう漏らした。 岡谷市の精密部品加工会社で研究開発に携わる阿部正隆さん(49)は「このままでは非民主主義国のような情報統制社会になりかねない。もっと議論を重ね、みんなが納得する内容を目指すべきだ。なぜそこまで審議を急ぐのか」と国会審議を批判した。 法案は6日にも参院で成立見通しになった。大学生のビジネスコンテストを運営するサークルの代表を務める信州大人文学部4年生の薦田夏実さん(22)=松本市=は「戦争の歴史を見れば、情報が一部の人に握られると誤った方向に進む可能性があるし、重要な文書が非公開や破棄となれば、後世の人が失敗から学ぶこともできなくなる」と強い懸念を示した。(長野県、信濃毎日新聞社)
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