「私たちも五輪選手になりたい」―。18日夜、ソチ五輪ノルディックスキー複合の渡部暁斗(わたべあきと)選手(25)=北野建設=は個人ラージヒルの後半距離で転倒しながらも6位入賞。地元の北安曇郡白馬村役場多目的ホールの特設応援会場では、村の小学生で唯一ジャンプ競技に取り組む女の子3人も応援。暁斗選手が1998年の長野五輪を機に小学生から世界を目指したように、次世代を担う3人も暁斗選手から五輪の夢をもらっていた。 3人は暁斗選手と、弟の善斗(よしと)選手(22)=早大=の母校白馬北小4年の宮嶋林湖(りんご)さん(10)、松沢幸さん(10)、笹川笑子さん(9)。それぞれジャンプ選手の兄姉の影響などで、1、2年生から競技を始めた。3人とも、風に乗った時がすごく気持ちいい―と、ジャンプが大好きだ。今年1月には暁斗選手が練習を見に訪れ、「僕が小学生のころよりうまい」と声を掛けてくれたという。松沢さんは「本当に強そうだった」とうれしそうに話す。 ただ、暁斗選手は小学生の頃から活躍していたわけではない。同小4年から6年まで担任だった中山実教諭(58)=大町市美麻中=によると、当時の暁斗選手は「身長がクラスでも低い方で、特段に上手ではなかった」。なかなか大会で勝てず、小5には「優勝したい」と題した作文で「さらに努力をして、がんばって、練習をして、それで、やっと優勝できる」と書いた。 村スキークラブによると、今季ジャンプに取り組む小学生が3人というのは近年で最も少ない。少子化や経費の負担などでスキー競技をする子どもは減少傾向だ。それだけに、「渡部兄弟の活躍で競技を始める子どもが増えてほしい」と多くのスキー関係者が期待する。 18日の応援会場には村民ら約160人が集まり、3人も「頑張れ」と日の丸を手に大きな声援を送った。前半から上位10人の混戦となり、最後の1周、暁斗選手が転倒すると会場から悲鳴が上がった。それでも先頭集団に食らい付く姿に「暁斗」コールが巻き起こった。善斗選手は35位だった。 試合後、笹川さんは「メダルを取れずに残念。でも最後まで諦めないところが格好良かった」。宮嶋さんは「善斗選手から元気をもらった」と興奮した様子。3人は「暁斗選手のように夢に向かって練習して、五輪で金メダルを取りたい」と目を輝かせた。(長野県、信濃毎日新聞社)
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