リニア中央新幹線計画で、阿部守一知事がJR東海の環境影響評価(アセスメント)準備書に対して20日に提出した「知事意見」。工事用車両の交通量を減らす方策の検討など関係市町村からの要望を踏まえた形の意見となったが、沿線住民からは「JR東海がどう対応するかが問題」と、同社の姿勢を注視する必要を強調する声が相次いだ。 「具体的な動きが出てくるまで安心はできない」。リニア建設で大きな影響が予想される下伊那郡大鹿村で村内の景観を記録する活動などに取り組む「大鹿の100年先を育む会」代表の前島久美さん(32)=大鹿村大河原=は、こう話した。 アセス準備書で同村は、国道152号を走る工事用車両が「1日最大1736台」と予測された。リニア計画に慎重な飯田下伊那地方の住民らでつくる「飯田・リニアを考える会」代表の片桐晴夫さん(75)=飯田市高羽町=は「村の静かな環境が変わってしまう」と心配し、「JRには日本のトップ企業として環境影響評価を徹底してほしい」と求めた。 環境省のレッドリストで絶滅危惧種に指定されたブッポウソウやミゾゴイへの対策を求める日本野鳥の会伊那谷支部(駒ケ根市)も「JRがこれを受け止めてしっかり対応するかどうか」と注目。大鹿村や上伊那郡中川村で探鳥会や調査を実施し、適切な対応を働き掛ける予定だ。 知事意見はJRに対し、工事用車両の通行時間や通行台数などに関する環境保全協定を関係市町村などと結ぶことも要請した。リニア県内駅の建設が予定される飯田市上郷飯沼・北条地区の自治組織会長の小平茂樹さん(72)は「飯田市や県が窓口になり、住民が納得できるように対応してほしい」と訴えた。 一方、木曽郡南木曽町の蘭(あららぎ)、広瀬両地域振興協議会は、両地域内の2カ所に計画された作業用トンネルの坑口(非常口)について「受け入れられない」としてきた。蘭地域振興協議会長の北原泰雄さん(72)はこの立場をあらためて主張し、「JRは地元としっかり話をしてほしい」と念を押した。(長野県、信濃毎日新聞社)
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