小県郡長和町や松本市で、国特別天然記念物のニホンカモシカや、ニホンジカの死体が相次ぎ見つかっていることが3日、関係者への取材で分かった。専門家は、2月上旬、中旬の大雪の影響で餌が不足したり移動が阻まれたりして衰弱死した可能性を指摘。今後、雪解けが進み、山へ入る人が増えると、「野生動物が死んでいるのが各地で見つかるかもしれない」と話している。 長和町教委によると、同町大門では1~3月、カモシカ計6頭が死んでいるのが見つかった。見つかったのは、1頭が1月で、5頭は2月上旬の大雪以降。大門の姫木平地区の別荘などの周辺では今年、人里に下りてきた複数のカモシカが毎日のように出没し、イチイの葉を食べる様子が目撃されていた。 町内でカモシカの死体が見つかるのは例年1頭程度。今回の6頭はいずれも幼獣か老獣で、担当者は「もともと弱い個体が大雪で動けなくなり、衰弱したのではないか」とする。 また、町産業振興課の担当者によると、数は数えていないものの、今年はニホンジカの死体も例年より多く見つかっているという。 一方、松本市入山辺の扉温泉付近でも2月の大雪後、ニホンジカの幼獣1頭の死体を市職員が確認した。市耕地林務課によると、一帯でニホンジカの死体が見つかることはあまりないといい、「雪が深く、親についていけなかったのかもしれない」。 県環境保全研究所(長野市)の岸元良輔・自然環境部生物多様性班研究員によると、1979(昭和54)~84年度に秋田市で行ったカモシカの幼獣の死亡率調査では、平均は53・5%だったが、大雪が降った83年度は88・9%。岸元研究員は、長和町の事例のはっきりした原因は分からないとしつつ、一般的に「大雪が降ると特に幼獣は死にやすい傾向がある」と指摘する。 北佐久郡軽井沢町のNPO法人「生物多様性研究所あーすわーむ」の代表理事を務める南正人・麻布大准教授が昨年1~3月、浅間山中腹で駆除したニホンジカの胃の内容物を調べたところ、ササや落ち葉、樹皮を確認した。「今年のような大雪ではササや地面の落ち葉が食べられず、栄養状態はかなり厳しいと思う」と指摘。県猟友会の竹入正一・副会長=上伊那郡辰野町=は「例年に比べ、野生動物が全体的に痩せている気がする」と話す。 南准教授によると、83年度の大雪の際、宮城県や北海道などでニホンジカやエゾシカが大量死しているのが見つかったといい、「同様のことが今年、各地で起きるかもしれない」とみている。(長野県、信濃毎日新聞社)
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