運営会社の第三セクター破綻で休業していた大町市所有の温泉宿泊施設「明日香荘」(大町市八坂)が23日、約7カ月半ぶりに新たな指定管理者の下で営業を再開した。三セクの破産手続きは今も続き、粉飾決算を繰り返した経営実態の解明も道半ばだが、住民が待ちに待った地域振興の拠点の再出発。関係者は思いを新たにこの日を迎えた。 明日香荘は、旧北安曇郡八坂村時代から三セク「株式会社あすかの杜(もり)」が経営。ことし3月に経営難が発覚して休業し、10月に「ハーヴェスタ・クリエーションズ」(大町市)が新たな指定管理者となり、再開を準備してきた。 この日は、あすかの杜の破綻で解雇され、あらためて雇用された7人を含む従業員16人が、にぎやかな太鼓演奏の中を訪れた大勢の住民らを出迎えた。復活した名物「灰焼きおやき」を買い求める人の列もでき、近くの女性(71)は「贈り物はいつもこれ。買い物弱者でよく食堂も使っていたから本当によかった」と再開を喜んだ。 一方、あすかの杜の債権を抱えたままの業者や住民も多い。回収を半ばあきらめているという取引業者の男性(69)は「再開に複雑な思いの人もいると思う」と話す。ただ、「休業によって明日香荘が八坂になくてはならない施設だとあらためて認識できた」とも。あすかの杜取締役の住民の1人も「毎日近くを通るたびに建物を見ていた。やっぱりここは明かりがついていないと…」と涙ぐんだ。 市は来年4月から第三者の経営評価委員会を設け、全指定管理施設のチェックを強化する方針。牛越徹市長はこの日の式典で「信頼回復には時間がかかる。できる限り応援していく」と述べた。(長野県、信濃毎日新聞社)
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