諏訪郡下諏訪町出身でコソボフィルハーモニー交響楽団首席指揮者の柳沢寿男さん(41)が3日、松本市の信大経済学部で講演した。国際政治の講義で、国際紛争について学ぶ一環。今も民族対立の火種が残るバルカン半島で、民族共栄を目指す演奏会を開く活動などについて話し、学生や市民ら約50人が聞いた。 柳沢さんは同楽団で客演指揮したのが縁で2007年、常任指揮者に就任。多民族の演奏家でつくるバルカン室内管弦楽団も設立した。ことし11月、コソボと対立するセルビアのオーケストラの名誉首席指揮者にも就いた。 講演では、アルバニア人とセルビア人が川を挟んでにらみ合うコソボ北部の町ミトロビッツアで09年、同管弦楽団の演奏会を開いたエピソードを紹介。演奏会に反対する住民に投石されるなど準備は難航したが、約20年ぶりとなる民族を超えた演奏会を実現した。「言葉で通じ合うのは難しくても、音楽は人と人をつないでくれる」と訴えた。 担当の美甘(みかも)信吾准教授は「講義でも地域紛争について話すがなかなか伝わりにくい」とし、紛争があった地域に身を置く人の話が学生たちの理解も深めると期待。同学部3年の田中量大(りょうた)さん(21)は「根深い民族対立を音楽を通して和解につなげられるのはすごい。政治にも広げれば、紛争を解決できるのではないか」と話した。(長野県、信濃毎日新聞社)
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