松本大(松本市)非常勤講師で臨床心理士の古林康江さんが、東日本大震災で被災した宮城県石巻市の大街道(おおかいどう)小学校の児童を対象にアンケートを実施し、震災から1年4カ月後の時点で、心的外傷後ストレス障害(PTSD)となる可能性があり心のケアが必要な児童が約5%いるとの結果をまとめた。現在、授業が受けられないなどPTSDの症状が出た児童はいないが、多数の行方不明者が出た津波被害は他の災害より心のストレスは大きいとされ、長期的な支援が必要としている。 同大は震災直後から同小を拠点にボランティア活動を続け、調査も独自に実施。古林さんは、昨年6月とことし7月に全校児童300人余にアンケートをし、生命の危険を伴うような災害や事件、事故などの体験が心的外傷となって引き起こされるPTSDになる可能性を探った。 質問は13項目で「ない(0点)」「すこしある(1点)」「ある(2点)」「よくある(3点)」の4段階で回答を求めた。「いやな夢を見る」「眠れなかったり、途中で目が覚める」「ちょっとしたきっかけで地震や津波のことを思い出してしまう」など特定の5項目が1点以上で、さらに他項目も合わせて計19点以上の場合、今後PTSDになる可能性があるとした。 7月の調査では、PTSDになる可能性の児童は、昨年6月より11人少ない17人。古林さんが同様の調査を行った阪神大震災や新潟県中越沖地震の被災児童の割合とほぼ同じだが、同小では友人や家族ら身近な人を失ったり、震災後に家族が離れて暮らしたりする児童に多かったという。 古林さんは、阪神大震災では3年余が経過した後、PTSDになる可能性のある児童数がピークになったと説明。「津波被害では行方不明者が長い間見つからないなど、心理的なストレスが長期化する。今後、さらに増える可能性があり、注意深く見守る必要がある」と指摘する。 同小の佐藤文昭校長は「不登校もなく、子どもたちの様子は以前と変わらないが、松本大の指導を受けながら見守りたい」と話している。(長野県、信濃毎日新聞社)
↧