北朝鮮が「弾道ミサイル」を発射したというニュースが伝わった12日、県民からは被害が何もなかったことに安堵(あんど)する声がある一方、外交や安全保障の在り方を真剣に議論すべきだという声が上がった。長野市の県庁では職員らが情報収集に追われた。沖縄県には長野県からの修学旅行生もいたが、動揺はなかった。 佐久市前山の主婦及川由子さん(70)は「沖縄など予定外の場所に落ちなくて良かった」としつつも「日本の外交、自衛隊はこのままでいいのかと考えてしまう」と不安そう。長野市柳原の谷崎照志さん(75)は「日本の政治空白を狙い、かく乱するために発射したんじゃないか」と受け止めた。 北佐久郡御代田町向原の主婦花里淳子さん(56)も「延期したんじゃなかったの?」と驚き、「(経済制裁などで)ある程度圧力をかけて、北朝鮮に抑制的な行動を求めることは必要かと思う」。 松本市島内の無職平沢奈美江さん(77)は「国民に警戒態勢を細かく伝えた政府の対応は評価する」。松本大3年の中村崇志さん(21)=北安曇郡池田町=は「ミサイル発射は外交カードの一つだと思う。日本に被害が出ないように備えるべきだが、基本的には冷静に外交で対応してほしい」と話していた。 戦時中に軍部に反対した地元出身の政治家百瀬渡を研究する百瀬和彦さん(86)=松本市神田=は「北朝鮮は力を誇示して自分の主張を通そうとしているように見える。日本は隣国との関係を見極めて協調しながら、国土を守ることが必要」と話した。 県庁には緊急情報ネットワークシステム「Em―Net(エムネット)」で午前9時55分ごろ、政府から「さきほど、北朝鮮の『人工衛星』と称するミサイルが南方向に発射されました」と連絡が入った。消防庁からも情報が入り、各市町村に情報を流すなど職員が対応に追われた。伝達トラブルはなかったという。 県教委によると、県内の3高校が修学旅行で沖縄県に滞在中。2年生176人を引率して沖縄県にいる大町北高校(大町市)の学年主任、小林国弘教諭は「平和祈念公園にいる時に発射を知ったが生徒や周囲に大きな動揺はなく、平穏な状況だ」と話した。(長野県、信濃毎日新聞社)
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