激しい下痢や嘔吐(おうと)を引き起こすノロウイルスが猛威を振るい県内でも集団感染や食中毒が相次ぐ中、お年寄りが利用する福祉施設や大勢の人が集まる旅館、学校などでは、何とか感染拡大を防ごうと必死だ。ノロウイルスは感染力が強いため、嘔吐物の処理に専用のキットを用意するなど対策に力を入れている。 長野市の総合福祉施設やすらぎの園は、施設内のあちこちにビニール製の使い捨てかっぽう着や消毒液、新聞紙などを集めた専用の「ノロキット」を数年前から置いている。利用者らが嘔吐した場合、必ずこれを使う。嘔吐した人や近くにいた人は別室に移し、24時間は様子を見る。 同市の別の入所施設は11月から、職員にマスク着用と毎朝の検温を義務付けた。面会に来た家族にもロビーでの面会を求めている。 県は今月12日、全県に初めて「感染性胃腸炎警報」を出してノロウイルスなどによる感染性胃腸炎の感染予防を呼び掛けた。が、26日に松本市養護老人ホーム松風園で、入所者と職員計39人がノロウイルスによる感染性胃腸炎に集団感染していたと、運営する社会福祉法人が発表。症状が出た入所者を別室に移すなどしたが感染が広がったといい、対応の難しさをうかがわせる。 飯田市の弁当店は、従業員の吐き気や下痢、発熱の有無などをチェック。パート勤務の人の中には子育て中の主婦が多く、子どもの体調が悪い場合には働かせない。「営業停止となると客が一気に離れる」との危機感からだ。 長野市の加茂小学校は27日の終業式で、全校児童を1カ所に集めるのではなく、校内放送を使って式をした。先週、感染性胃腸炎による学級閉鎖があったためだ。同校は「校内での流行は終息に向かっているが大事を取った」と説明する。 観光業者も大勢の客が訪れる年末年始を前に細心の注意を払う。諏訪市の旅館は、食中毒の発生状況などに関する新聞記事が載るたびに、従業員でコピーを回覧し、情報を共有している。担当者は「この時期に食中毒で営業停止となれば、生命線が絶たれる」と気を引き締める。客が嘔吐した場合、原因が分からなくても感染をまず疑うよう従業員に指導している。(長野県、信濃毎日新聞社)
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