カヌーの北京、ロンドン両五輪代表で飯田市出身の矢沢一輝選手(23)=山田記念朝日病院=が29日、来年1月に善光寺(長野市)で出家し、僧侶になることを明らかにした。同時に、今後は五輪をはじめとする国際大会への出場は目指さず、国内大会に活動の場を移すことも表明した。 矢沢選手は小学1年でカヌーを始め、高校時代から世界大会などを転戦。今夏のロンドン五輪では、スラローム男子カヤックシングルで9位の成績を残した。2016年リオデジャネイロ五輪開催時はまだ27歳。今回の決断について「選手としての身体能力や経験値は最も充実する年齢だが、そこから第二の人生を始めることに不安があった」と明かす。 この時期に引退することは、2年前に決めていたという。当時は大学4年で、卒業後のスポンサー探しで相談していた県カヌー協会長で善光寺天台宗一山の寿量(じゅりょう)院の小山健英(けんえい)住職(65)に「社会人として世界を目指すなら、どの五輪まで続けるのか区切りを決めた方がいい」と助言されたためでもあった。 一方、僧侶になるのは「カヌーで自分を鍛え、苦難を乗り越えた経験を生かし、人を助ける仕事に就く決意をしたため」。小山住職から受けた影響は大きく、選手としての心構えなどを相談する中で「自分の視点に立って一緒に悩み考えてくれた」と話している。 矢沢さんの申し出を受けた小山住職が、1月6日に善光寺大勧進で僧侶になるための「得度(とくど)式」を開く。矢沢さんはその後、7~9月に滋賀県にある天台宗の僧侶養成道場「行院(ぎょういん)」で修行。将来は僧侶とカヌーの選手、指導者として活動することになる。(長野県、信濃毎日新聞社)
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