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若年性認知症の原因病、遺伝子で診断 信大グループが国内初

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 若年性認知症の原因となる病気の一つで、これまで死後の解剖でしか報告がなかった「軸索腫大(しゅだい)を伴う遺伝性びまん性白質脳症」(HDLS)について、信大医学部(松本市)のグループが国内で初めて、遺伝子診断で患者を生前に特定したことが29日、分かった。確認した患者は5家系6人で、うち県内は3家系4人。遺伝子診断から病態の解明が進めば、現段階で開発されていない有効な治療法にも道が開けそうだ。  遺伝子診断をしたのは、神経難病学講座の吉田邦広教授(神経遺伝学)と小柳(おやなぎ)清光教授(神経病理学)、第3内科学講座の池田修一教授(神経内科学)らのグループ。HDLSは世界でも報告例が30前後しかなく、国内では死亡した患者の脳の解剖による報告が数例あるだけだった。信大グループが遺伝子診断で確認後、新潟大などの診断も加わり、これまでに国内で10家系ほどが確認されている。  診断は、23対あるヒトの染色体のうち、第5染色体にある「コロニー刺激因子1受容体」という遺伝子の変異を調べる。両親のどちらかから変異した遺伝子を受け継げば現れる優性遺伝で、遺伝情報に関わる塩基配列が1カ所置き換わっただけで発症する。  信大グループは、付属病院で数年来診ていた病名不詳の女性患者を、学内手続きを経て手術によって脳の組織を検査。病変の特徴からHDLSと診断した。その後、米国のグループがHDLSの原因遺伝子を特定したため、女性患者の遺伝子と照らし合わせて確認。2例目以降は血液で遺伝子を検査し診断した。今後、新潟大などと協力して診断基準の確立や病態解明、治療法の開発などを進める。  厚生労働省研究班の2009年の推計によると、若年性認知症の患者は全国で約3万7800人。原因となる病気は脳血管障害が約40%で、約25%のアルツハイマー病を上回る。吉田教授は「これまで血管性認知症と診断されていた若い患者の中にHDLSが含まれていた可能性が高い」と指摘。「遺伝子診断が進めば、さらに患者が見つかる可能性がある」とする。  認知症に詳しい中村重信・広島大名誉教授(神経内科学)は「生前に病気が分かることは予防や治療を考える上で画期的な成果。iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って新薬開発を進めるなど、いろいろなアプローチが考えられる」と話している。(長野県、信濃毎日新聞社)


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