環境省と県のレッドリストで絶滅危惧2類に指定されているタカ科のサシバについて、長野市のNPO法人「ラポーザ」が下高井郡木島平村で調査したところ、一つの巣から巣立つひなは平均2羽に満たず、全国の他の生息地に比べて少ないことが10日、分かった。原因ははっきりしないが、餌が不足している可能性があるとの見方もあり、ラポーザは詳細な調査を今春始める計画だ。 サシバは体長約50センチの渡り鳥で、日本や中国北東部などで繁殖し、主に東南アジアで越冬する。谷の奥まで集落や農耕地がある場所を好み、県内では北部に多く飛来する。里山の動植物調査を手掛けるラポーザは木島平村にこうした環境があり、毎年4月ごろにサシバが飛来している点に着目した。 調査は2011年と12年に村内で確認されたそれぞれ12カ所の巣を対象にし、望遠鏡で定期的に観察。その結果、繁殖に成功した巣(11年10カ所、12年9カ所)から巣立ったひなは11年が1カ所当たり1・6羽、12年は1・33羽だった。猛禽(もうきん)類の研究・保護グループ「日本オオタカネットワーク」(静岡県焼津市)などが05~07年の各地のデータを分析したところ、巣立ったひなの数は関東2・03羽、中部2・28羽、中四国2・17羽、九州2・0羽などで、同村はこれらを大きく下回っていた。 ラポーザの荒井克人理事長(33)は「ひなの餌が少ないのではないか」と指摘。同ネットワークの野中純副代表(41)は「木島平村は春先も雪が残り餌場が限られるため、飛来直後の雌の栄養状態が良くなく、産卵数が少ないのではないか」との見方を示している。 ラポーザは今後、カメラを近くに据えて巣の様子を観察し、餌の中身や餌づけを詳しく調べる。荒井理事長は、サシバは里山の生態系で頂点にいる種で生き物の多様性を示す存在だとし、「保全には地元の協力が欠かせない」と地域の関心の高まりも期待している。(長野県、信濃毎日新聞社)
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