JR東日本の冨田哲郎社長は23日、信濃毎日新聞の取材に対し長野以北の並行在来線の譲渡価格などを協議するため、阿部守一知事と来週会談すると明らかにした。2014年度末に予定する北陸新幹線長野―金沢開業時に経営分離されるJR信越線長野―直江津で、県が実勢価格よりも割高の帳簿価格(簿価)で約60億円と試算した県内分の鉄道資産について、JRは半額程度で売却する案を提案し、最終調整する方針だ。 長野以北の並行在来線の譲渡価格をめぐっては、同社と県が昨年9月から交渉を本格化。1997年の長野新幹線(北陸新幹線高崎―長野)開業に伴いJR東から経営分離され、県の第三セクターしなの鉄道(上田市)が現在運営する軽井沢―篠ノ井の鉄道資産は、JRが示した簿価通りの103億円で購入。減価償却費がしなの鉄道の経営を圧迫しただけに、県側は「極力低廉な価格での譲渡」(阿部知事)を求めている。 JR東日本は、簿価の半額で合意した青森県との交渉結果も踏まえて「長野県とも誠意を持って交渉していく」と説明。JR西日本と富山、石川両県との交渉も半額程度で合意しており、JR東幹部は「長野県を含め各県ともほぼ同じレベルになる」とする。県は、08年度に長野―妙高高原(37・3キロ)の区間を簿価で推計した約60億円の資産額について、交渉の基準となる簿価をあらためてJRと精査している。 また、長野―直江津の並行在来線に対し国土交通省が導入する新たな財政支援策についても、具体化に向けた同省と長野、新潟両県との協議が近くまとまる予定。長野県内区間への支援額は県が昨年2月に試算した年間4億円強を確保できる見込みだ。こうした状況も含め、JRと県は経営分離後の長野以北の鉄路を維持できるよう、技術協力など同社による他の支援策も詰めるとみられる。 JR東と青森県は2009年、東北新幹線八戸―新青森開業に伴う東北線の鉄道資産について簿価の半額に当たる約80億円で譲渡することで合意した経緯がある。北陸新幹線延伸に伴う並行在来線の譲渡価格交渉でも、富山県が昨年11月、車両を含む北陸線の鉄道資産を同県の見積価格約230億円から約110億円に圧縮して買い取ることでJR西日本と合意したと発表。石川県も、見積価格約59億円に対し約31億円で同社と合意したと明らかにしている。(長野県、信濃毎日新聞社)
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