県立特別支援学校の寄宿舎で30代男性指導員(懲戒免職)が女子生徒3人にわいせつな行為をした事件を受け、専門家や障害者団体などから、指導員の採用や研修の方法を見直すべきだとの指摘が出ている。今回の指導員は臨時的任用で、校長の面接だけで採用していた。他の県立特別支援学校も同じように臨時的任用の職員を採用しており、障害のある生徒に日常的に接する指導員の採用方法としては不十分だとの声が出ている。
県教委特別支援教育課は29日の取材に対し、「採用方法の見直しを検討する可能性もある」とした。
県教委によると、県立の特別支援学校18校のうち、15校に寄宿舎があり、通学が不便などの理由で計440人の児童生徒が平日を中心に利用。指導員計212人が一緒に生活しながら、児童生徒の卒業後の自立に備えて掃除、洗濯、配膳などの指導をしている。
正規採用の指導員は県教委が試験と面接、体力測定を経て合否を判断するが、全体の2割を占める臨時的任用の指導員は、各教育事務所に履歴書を提出するなどした希望者を校長が面接して決定。指導員は採用後に一定の研修を受けるという。
県教委によると、少なくとも過去10年間は特別支援学校の教職員によるわいせつ事件は起きていない。ある特別支援学校の校長は「正規か、臨時かに関係なく指導員はよく頑張っている」と強調した上で、「面接だけでなく、一定期間ボランティアとして子どもと接するなど、別の方法も加えて選考できればなおいい」とする。別の特別支援学校の校長も、問題を起こす人物かどうかは面接だけでは判断できない、と話した。
長野大学(上田市)の旭洋一郎社会福祉学部教授(障害者福祉論)は「校長一人の判断は恣意(しい)的になる可能性もあり、極めて危険。指導員の責任者や卒業者など複数の判断が必要だ」と指摘している。
県内約40の障害者団体などでつくる県障害者運動推進協議会は29日、事件の再発防止を県などに申し入れ、原金二事務局長は「教職員の採用は、人権感覚と専門性を身につけた人を見極められる制度になっているのか。採用後の研修も見直す必要がある」と求めた。
県内の特別支援学校の寄宿舎に中学3年の娘を預けている母親(42)は、子どもを託している保護者から見れば、指導員も信頼する「先生」だとし、「採用時に裏の裏まで見抜いてもらわないと安心して子どもを託せない」と話している。(長野県、信濃毎日新聞社)
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