阿部守一知事は29日、JR東日本の冨田哲郎社長と県庁で会談し、2014年度末の北陸新幹線金沢延伸でJRから経営分離される長野以北並行在来線(JR信越線)の県内分の鉄道資産と車両について、35億円余で譲り受けることで合意した。県が推計した70億円程度の半額。長野―妙高高原(8駅・37・3キロ)の経営を引き継ぐ県の第三セクター、しなの鉄道(上田市)が購入主体となり、34億9700万円を占める鉄道資産取得費は県が全額補助する。
会談は冒頭を除き非公開。阿部知事や県企画部によると、これまでの交渉で県側は、地域鉄道運行には過大とする長大なホームや引き込み線などの資産について譲渡価格から差し引くことなどを求め、今回の価格で合意した。
知事と冨田社長は、JR側が▽開業までに鉄道施設を整備(約25億円)▽しなの鉄道への出向者の人件費を一部負担(約1億円)―など4項目(計約44億円)の支援策=表=を実施することでも合意した。金沢延伸に向け広域観光ルート整備や情報発信で協力することも確認。知事はJRグループと地元が連携する大型誘客事業を延伸後実施することも要請した。
知事は譲渡価格を支援策が上回っているとして「鉄道資産の譲り受けは実質的に無償という形になった。しなの鉄道が(長野以北を)運行していく上で大変有効」と評価。冨田社長は取材に「JRも県も納得できる決着だ。開業に向け円滑に新しい新幹線、しなの鉄道がスタートできるよう支援していく」と述べた。
長野以北の資産譲渡をめぐっては、県とJRが昨年9月に本格交渉入り。1997年の長野新幹線(北陸新幹線高崎―長野)開通に伴い旧信越線篠ノ井―軽井沢間を引き継いだしなの鉄道は、JRが示した通りの103億円(車両を除く)で購入し、減価償却費が経営を圧迫。この経験を踏まえ県は長野以北の資産取得費を全額県が補助することとする一方、可能な限り低価格での譲渡をJR側に働き掛けてきた。(長野県、信濃毎日新聞社)
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