下伊那郡阿智村の駒場区自治会(355戸)が30日までに、集会施設「駒場区事務所」の老朽化に伴い、新たな施設を造るかどうかを問う1戸1票の区民投票を行い、賛成159票、反対152票の7票差で建設することを決めた。箱物施設の新設に住民の意見が分かれたこともあり、最終判断を投票に託した。投票結果は僅差だったが、自治会役員らは91・3%という高い投票率で身近な課題に答えを導き出した成果は大きいと話している。 同自治会によると、区事務所は昭和40年代に地元財産区が建設し、同自治会が管理を引き継いだ。新改築の話が持ち上がったのは2007年。交流や防災などの機能もある多目的自治会館の建設が検討され、10年に各戸対象のアンケートをしたところ、新改築を望んだのは44・0%、どちらとも言えないとしたのは34・2%、今のままでいいとしたのは13・3%だった。 その後、特別委員会を設けて11年から話し合いを進めたが、「地域のよりどころとなる所が必要」との声の一方、「目的のはっきりしない箱物は必要ない」との声もあった。昨年2月、区民投票で結論を出すことを決定。自治会総務部の3人でつくる区民投票管理事務局を設置した。 自治会としては村に建設費の負担を求める意向だと住民に伝えた上で、各戸が「建設を進める」「建設しない」のどちらかに投票し、有効投票の過半数を得た方を結論とするルールを決定。今月20日までに全戸に投票用紙を配布し、各戸ごとに記入して封筒に入れ、25日までに組長に届けてもらった。28日に区事務所で開票した。 区長(自治会長)の羽場睦美さん(59)は、区事務所の存在を知らない住民もいたが、地区の課題への関心を高める結果にもなった、とする。投票について家庭で話し合ったり、地区で話題になったりしたといい、「わずかな差で驚いたが、結果はしっかり受け止めたい」と話している。 区民投票について、阿智村の岡庭一雄村長は「住民主体の自治の表れではないか」とし、僅差で結論が出たことについては「住民の考えが率直に表れて良かった」と話している。同村では1999年にも廃棄物処分場の受け入れについて、伍和(ごか)自治会内の備中原、丸山両区が住民投票で結論を出したことがある。(長野県、信濃毎日新聞社)
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