天竜川の冬の風物詩「ざざ虫」漁が低調だ。トビケラやヘビトンボなどの幼虫の総称で、つくだ煮などにするが、採れる量が減った上、漁をする人も高齢化などで減り、ざざ虫の買い取り価格が上がっている。2006年の豪雨災害後に11年まで続いた河川工事が生息環境に影響したとの見方もあるが、この間の調査でざざ虫が増えた年もあり、原因ははっきりしない。 駒ケ根市中沢の菅沼重真(しげま)さん(77)は週何回か、市内の天竜川で漁をする。四つ手網を固定し、上流側で石をひっくり返すと、石の裏にいるざざ虫が網の中に流れ込む。以前は3時間ほどで1キロ採れたというが、今季は100グラムほど。「ざざ虫も減ったが、漁のできる浅瀬も減った」 漁場を管理する天竜川漁業協同組合(伊那市)によると、ざざ虫を採るための「虫踏(むしふみ)許可証」の取得者も徐々に減少。06年の豪雨災害前は例年50人ほどだったが、今季は24人(4日現在)だ。 国土交通省天竜川上流河川事務所(駒ケ根市)調査課は、同豪雨後に工事をした上伊那郡辰野町―伊那市間約20キロの4カ所で毎年度、ざざ虫の生態を調査。1平方メートル当たり100グラムを生息量の目安とすると、07年度は1カ所で、08年度は4カ所全てで目安を上回った。10、11年度は上流2カ所では上回ったが、下流に行くほど減少。工事終了から2年近くたち、他の川虫は戻りつつあるといい、担当者は「河川工事がざざ虫の減少につながるとは一概にはいえないのではないか」とする。 ざざ虫の甘露煮などを製造販売する伊那市の会社は今季、計250~300キロの入荷を見込む。以前は1回に4~5キロが持ち込まれたが、今季は1・5キロほど。仕入れ値を1キロ5千円から6千円に上げて対応している。 伊那市の三峰川と天竜川の合流点より下流は、08年に三峰川支流で起きた土砂崩れの影響で水が白濁。菅沼さんは、石と川底の間に粘土が多いと感じるといい、新たな漁場を求め中州に渡っている。(長野県、信濃毎日新聞社)
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