野生動物の調査を子どもたちが担うユニークな試みが4月から、大町市の北アルプス山麓で本格始動する。一帯で自然体験活動に取り組む「千年の森自然学校」(大町市)が3年間試行してきた小学生のカモシカ生息調査を拡充。「信州ジュニア動物レインジャー」と名付け、野外活動の技術を身に付けながら野山に分け入り、野生動物が多い大町の豊かな自然環境を発信しようと準備を進めている。 大町市街地に近い高瀬川上流の自然学校(約300ヘクタール)一帯には、多くのカモシカが生息している。2002年から東京の動物専門学校の実習で生息調査が始まったが、3年前に中断。キャンプなどで自然学校に通う県内外の小学生たちが代表の朝重(ともしげ)孝治さん(51)らと調査を引き継ぎ、十数頭の生態や行動範囲などを記録している。 「段階を踏めば子どもでも大人顔負けの調査ができると分かった」と朝重さん。センサーカメラの定点観察地点を増やしてより詳しく個体を識別し、縄張りの実態、繁殖率などの解明を進め、カモシカを中心とした野生動物の保護につながるデータを蓄積する体制をつくるため、レインジャー設立を決めた。 1956(昭和31)年からカモシカの保護・飼育を続けている市立大町山岳博物館との連携も模索中。同館の宮野典夫館長は「博物館が積み重ねた知識を共有するなど、全面的に支援して子どもたちをもり立てたい」と期待を寄せている。 活動は通年が基本。朝重さんや若手スタッフらと毎月一度程度は森に寝泊まりしてカモシカを追いつつ、火のおこし方や刃物の使い方を学ぶほか、地図とコンパス、衛星利用測位システム(GPS)、高度計を使いこなして山中を安全に歩く技術を習得する。自主性を引き出すため話し合いを重視し、危険回避の上でも欠かせないチームワークを体得していくという。 現在の隊員は、埼玉県の小学6年生山〓(崎の大が立の下の横棒なし)菜央さん(11)と大町市の小学5年生朝重るりさん(11)、千葉県の小学4年生前多優駿(ゆうしゅん)君(10)と埼玉県の同吉田智咲(ちさき)さん(10)ら。既に近場なら子どもだけで調査に出掛け、カモシカの休憩場所の記録や体毛などの採取を自主的に進められる腕前だ。 小学校入学前から自然学校に通い、調査に加わっている山〓(崎の大が立の下の横棒なし)さんは、がけから転落して胎内の子どもと共に動けなくなったカモシカの死もみとった。中学進学で大町に来る回数は減りそうだが、「もっと多くの人にカモシカのこと、森のことを知ってほしい」と、個体ごとのアルバム作りなどを進めている。 新隊員として3年生以上の小学生10人程度を募集中。問い合わせは千年の森自然学校(電話0261・23・6860)へ。(長野県、信濃毎日新聞社)
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