中央道恵那山トンネル下り線(下伊那郡阿智村―岐阜県中津川市、8489メートル)の天井板の撤去を中日本高速道路(名古屋市)が3月中に完了させたいとの意向を示したことについて、国土交通省は7日、県内沿線自治体など関係団体との合意形成が十分でないとして、工期を複数案示して地元調整をやり直すよう同社に指示した。同社は応じる意向で、信濃毎日新聞の取材に「(地元などと)引き続き協議していく」(広報室)と説明、工事が3月以降となる可能性を示した。 この日、県は和田恭良副知事らが国交省と同社を訪れ、工事期間中の地域への影響を最小限にし、地域の理解を得た上で工事を実施するよう求めた。県は要請書で「(3月は)人の移動や物流が増加する時期で、大雪による交通渋滞も予想され、スキー産業、宿泊業などの地域経済や生活面への影響に強い懸念の声が出ている」と指摘。県内観光や経済などへの影響を最小限にするため、工事中は同社管内の県内区間の高速道路料金を無料にすることも求めた。 県側は、信州・県観光協会と県旅館ホテル組合会の要請書も同社に提出。同協会は工事の周知期間の十分な確保を、組合会は観光客の多い3月や大型連休中の工事を避けるよう要請。同社側は「検討する」と答えたという。一連の要請について、飯田下伊那地方の14市町村でつくる南信州広域連合の高田修事務局長は「県にきちんと対応してもらえたのはありがたい」と話した。 天井板崩落事故があった中央道笹子トンネル(山梨県)は8日に全面復旧する予定。関係者によると、中日本高速道路は笹子の作業員や工事機材を恵那山に回すことで、短期間で一連の対応を完了させたい意向もあったという。恵那山上り線には片側にしか非常駐車帯がないため、同社は工事中は上り線を利用した対面通行にせず、下り車両は木曽谷の国道19号などに迂回(うかい)してもらう方針を示している。(長野県、信濃毎日新聞社)
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