信大全学教育機構(松本市)の三沢透講師(38)=観測天文学=らの研究グループは19日、100億光年離れた天体「クエーサー(銀河中心核)」から吹き出しているガス流を、「重力レンズ効果」という現象を利用し、2方向から立体的に観測することに世界で初めて成功したと発表した。ガスは星の形成などに影響を与えると考えられている。都内で開いた会見で三沢講師は「ガス内部は複雑な構造で、うろこ雲のような濃淡があるのではないか」とした。 東大、国立天文台、奈良高専などとの共同研究。天文学専門誌「アストロノミカル・ジャーナル」に発表した。 クエーサーは、銀河の中心にあるブラックホールに引き寄せられたガスが高速で回転し、摩擦によって明るく輝いている天体。そこから吹き出すガスは星の形成を遅らせるなどの影響があると考えられている。ただ、100億光年も離れているため、ガスの立体的構造などが分からなかった。 銀河などの天体の周りでは、重力で空間がゆがめられ、そこを通過する光も曲げる働き(重力レンズ効果)がある。三沢講師らは観測対象のクエーサーの光が、地球との間にある銀河団の重力レンズ効果を受けていることに着目。クエーサーから地球に届いている二つの光=模式図A、B=は、ガスの違う部分を通過して来たのではないかと考え、国立天文台のすばる望遠鏡(米ハワイ島)で観測した。 その結果、二つの光の成分が違うことなどが分かり、「複数方向からの観測に成功した」と結論づけた。それに伴いガスの濃さに違いがあることを確認した。 研究グループは3月にも同じ観測を再び実施。その結果を踏まえ、同じクエーサーから届いている別の光=模式図C=も観測するなどし、ガスの内部構造をさらに詳しく調べる計画だ。(長野県、信濃毎日新聞社)
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