茅野市蓼科高原の山荘で数々の脚本を執筆した映画監督の小津安二郎(1903~63年)と、脚本家の野田高梧(こうご)(1893~1968年)をしのぶ「蓼科・夏の小津会」が1日、同高原で開幕した。来年の小津生誕110年をゆかりの地から盛り上げていこうと初めて開催。初日は、2人をよく知る関係者が生前の逸話を語る会や、脚本を練りながら歩いた散歩道を案内する催しがあり、全国から訪れたファンを楽しませた。 語る会は、晩年の小津作品のプロデューサー山内静夫さん(87)=神奈川県鎌倉市=と、小津監督のおいの長井秀行さん(75)=同=が講師。小津監督が東京から多くの映画人を招いた山荘「無芸荘」に、定員いっぱいの40人が集まり、2人が愛飲したダイヤ菊酒造(茅野市)の日本酒を味わいながら、打ち解けた雰囲気で語りを聞いた。 山内さんは、故淡島千景さんらが出演した「早春」(56年)撮影中のスナップ写真など貴重な資料をモニターに映しながら、小津監督の服装や趣味、自宅があった鎌倉での交遊などを紹介。長井さんは、まだ未舗装だった散歩道を2人と歩いた際、小津監督が「蓼科には道路がない。道路予定地があるだけだ」と冗談めかしたことなどを話した。 蓼科・夏の小津会は、語る会を11日までに計5回予定。2日も、散歩道を歩く催しが午後1時から、語る会が午後4時からある。問い合わせは蓼科観光協会(電話0266・67・2222)へ。(長野県、信濃毎日新聞社)
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