県内の酒造会社や酒米生産者、県などが連携し、高品質でブランド力のある酒米の新品種育成に乗り出す。大吟醸などの高級酒には、兵庫県原産の酒米「山田錦」が使われることが多いが、気候面で長野県内では栽培に向かないとされる。日本酒消費が落ち込む中、県内の気候や風土に適した「日本一の酒米」を育て、新たな信州産日本酒を生み出す構想だ。 県内の酒造会社44社と種もみを供給する全農県本部、県が加わり、7日、長野市内で「県酒米研究会」を設立。県酒造組合(長野市)会長の今井用一・今井酒造店(同)社長を会長に選んだ。今後は酒米生産者も会員に加える。 県農業試験場(須坂市)などによると、県内で栽培されている酒米には県内原産の「美山(みやま)錦」や「ひとごこち」などがあり、県産日本酒の多くが県産酒米で醸造されている。ただ、各酒造会社がトップブランドとして売る高価格帯の製品には、「酒米の王者」とも言われる山田錦など他県産が使われることが多い。 標高が高い県内は山田錦の栽培には適さず、美山錦も品種登録から30年以上が経過し、温暖化の影響もあって県内産の品質は低下しつつあるのが現状という。 同試験場も新たな品種の育成を進めているが、優良な掛け合わせの選抜や試験栽培には10年前後かかる。研究会は、育成の早い段階から会員の酒造会社や生産者が栽培・醸造試験に関わることで、意見を反映させ、育種にかかる時間の短縮を図る。収量や病害への強さに加え、酒造りに適するかどうかの観点からも研究を重ねていく。 県酒造組合によると、県内の2011醸造年度(11年7月~12年6月)の日本酒出荷量は1万1636キロリットルで、20年前の約3分の1に落ち込んだ=グラフ。同組合は、消費者の好みの変化に加え、山田錦などのブランド米頼みで、新たな高品質酒米の育種が停滞していたことも背景にあるとみている。 他県でも独自の酒米開発が盛んになっており、今井会長は「日本中どこに行っても同じコメの酒では面白くない。時間はかかるが、県独自の酒米の確立がブランド化への近道だ」と話している。(長野県、信濃毎日新聞社)
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