信州大(本部・松本市)は、繊維、化学メーカーと共同で極細の炭素繊維カーボンナノチューブ(CNT)を使って効率的に水を浄化する新たな水処理膜(ナノカーボン膜)の開発に乗り出す。政府の本年度補正予算から数十億円補助を受け、来年度末までに工学部(長野市)に研究拠点を整備。新技術を基に水の循環システムの構築を目指す。県を交え、事業化による海外展開も視野に入れている。 現在、急速に工業化が進む中国などでは工場排水による河川や海の汚染が深刻化。今後、世界的に水需要が高まると予想されており、水の浄化技術に注目が集まっている。信大などの技術開発と事業化が実現すれば、信州発の世界貢献にもなりそうだ。 CNTは、遠藤守信・信大特別特任教授が同大工学部教授時代に開発。新しい膜の開発には、信大のほかに、膜による水処理技術を持つ繊維メーカーの東レ(東京)、CNTを大量生産できる化学メーカーの昭和電工(同)が関わる。 文部科学省は補正予算で、大学、企業が共同で革新的技術を育てる国際科学イノベーション拠点整備事業として総額500億円を確保。1月から事業提案を公募し、信大、東レ、昭和電工、県の4者が共同提案した「世界の水を守るエコ・ナノカーボン研究拠点」(仮称)など59件の応募があった。文科省は7日、信大の事業を含む15件を採択して発表した。 信大などは拠点整備に約60億円を要求。同省は月内に補助額を確定する。関係者によると、拠点が整備された後に必要となる研究費は、国の来年度予算で別途獲得を目指す。県は、今回の計画が事業化に進む過程で県内企業が関わって仕事を受注できるよう取り持つなど、側面支援する。(長野県、信濃毎日新聞社)
↧