信州大工学部(長野市)の呼び掛けで4月、同学部の技術を農業生産や食品製造に生かす産学官の連携組織「食・農産業の先端学際研究会」が発足する。生産者や農業団体、食品・農業機械メーカーなどが参加。小水力発電システムや農産物の自動収穫装置など同学部の研究者が開発した技術を現場で応用し、栽培技術や加工食品などの開発も進める。同学部で蓄積した工業技術を生かし、高齢化や野生鳥獣被害といった農業が直面する課題の解決につなげる構想だ。 研究会には、「栽培技術」、再生可能エネルギーの活用などの「栽培環境システム」、農作業の「省力・自動化」、健康効果などを見込んだ「高機能食品加工」、「人材育成」の五つの研究部会を設置。年3、4回の研究部会、講演会やシンポジウムの開催を計画している。 同学部はこれまで、専任のコーディネーターが企業・団体の相談に応じ、研究者を紹介して技術支援や共同研究に当たってきた。今回の研究会を通じ、食や農業に関わる産学官関係者が知識や技術を持ち寄ることで、新たな課題解決の方法を探る。 例えば、電気が通っていない山間部の野生鳥獣被害対策では、同学部教授が開発した小水力発電設備を農業用水に設置し、電気柵の電源を確保。県北部地震で北信地方のキノコ農家の栽培施設が被災した経験を踏まえ、これまでの耐震技術を施設の設計などに生かす構想もある。 工学部機械システム工学科の酒井悟准教授は、農家の高齢化を踏まえ、クレーンゲーム機のような動作でスイカを持ち上げる収穫ロボットを開発中。県内で主力のハクサイやキャベツの収穫への応用も検討しており、「研究会で生産現場のニーズをくみ取り、多くの作物で使える技術を生み出したい」と話す。 このほか研究会の活動として、ホウレンソウをハウス栽培で通年出荷できるようにするための実証栽培や、最新の加工技術を使った食品開発などにも取り組む。 13日に同学部で開いた記者会見で、研究会理事長に就任予定の千田有一教授は「各学科それぞれの強みを生かして新しいことにチャレンジしたい」と話した。研究会には同学部のほか農学部や繊維学部などの研究者も加わり、4月17日に設立総会を開く。(長野県、信濃毎日新聞社)
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