環太平洋連携協定(TPP)への交渉参加を安倍晋三首相が表明した15日、慎重姿勢を示していた自民党県関係国会議員は複雑な心境をのぞかせた。関税を撤廃した場合、国内農業に大きな打撃を与える試算も判明。県内農業者の不安をどう払拭(ふっしょく)していくのか。与党議員に突き付けられた課題は重い。 「忸怩(じくじ)たる思いだ」。党県連会長の吉田博美氏(参院県区)は議員会館自室で首相の会見中継を見届けると、こう漏らした。「自分はあくまでも交渉参加には慎重な考えだ」とし、関税撤廃の例外確保や国民皆保険制度は「どんなことがあっても守り、言うべきことは言う。その決意を新たにした」とした。 長野市の事務所で会見を見守った外務政務官の若林健太氏(同)は、政府試算をめぐる議論がないままの参加表明は「率直に言って残念」。十分な情報提供で農業者の不安を解消し、担い手確保など農業対策を「加速させていく」と強調した。 首相は会見で、昨年の衆院選公約は「国民との約束」と強調した。法務副大臣の後藤茂之氏(衆院4区)は「国民との約束を必ず守ることを前提に、交渉に臨んでほしい」と交渉入りは容認する考えだが、守れない場合は「脱退すべきだ」と言明。木内均氏(衆院比例北陸信越)は「衆院選で訴えた公約とはたがえていない。公約を守れるかどうかで交渉の行方は判断してほしい」。小松裕氏(同)は「これからがスタート。約束が守られるかどうかをチェックしていく」と述べた。 党はコメなど重要農産品を関税撤廃の例外とするよう決議。小坂憲次氏(参院比例)は「党として守るべき分野は明確にしている。首相は決議を十分に尊重してほしい」と求め、党経済産業部会長の宮下一郎氏(衆院5区)は「(例外が)確保できない時には、脱退も辞さない覚悟で臨んでほしい」と指摘した。 務台俊介氏(同2区)は、首相が交渉参加により「ルールづくりをリードできる」と強調したことに「希望的観測のようにも聞こえる」と懸念。先行して参加した9カ国との交渉は「日本は守るものばかりで攻める材料がない。交渉の難航も予想される」との認識を示した。 一方、公明党県本部の太田昌孝代表は「農業分野だけでなく、国民皆保険などの医療分野でも守るべきものはある。毅然(きぜん)とした態度で交渉に臨んでほしい」とし、政府方針に一定の理解を示しつつ慎重さも求めた。(長野県、信濃毎日新聞社)
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